改訂新版 世界大百科事典 「メリュジーヌ」の意味・わかりやすい解説
メリュジーヌ
Mélusine
フランス中西部ポアトゥー地方の町リュジニャンにあった古城の起源にまつわる伝説の中の半身蛇体の女性。伝承ではアルバニアの王と水の精ウンディーネの娘で,土曜日には下半身が蛇体となる。リュジニャンの領主レーモンと結婚し10人の息子を生み幸福に暮らしていたが,夫が禁を破って土曜に姿を見てしまったので窓から竜となって飛び去った。夜に幼子に乳を与えに来ていたとされる。リュジニャンの城主が替わる時やフランスに不幸が起こる際には3日前に叫び声で警告したという。リュジニャンの城を手に入れたベリー公ジャンはこの伝承を知って,1392年にジャン・ダラスJean d'Arrasに散文小説を書かせた。14世紀にクールドレットも同じ伝承を韻文で書き,近代ではゲーテも取り上げている。
執筆者:松原 秀一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報