文法用語。日本語でいえば、「牛は家畜だ」「電車が走っている」「犬が猫を追いかけている」「彼は死ななかった」などといった文の「家畜だ」「走っている」「追いかけている」「死ななかった」がその実例である。すなわち、文が表しているある局面に含まれ、その局面を特徴づけている属性とか動作とかを表す部分である。言語活動における発話の単位としての文が、現実世界のある局面を表す(または表しうる)ものである限り、その文にこのような部分(述語)が不可欠なのは当然であり、したがってどの言語においても、その正規の文には述語とよびうる部分が存在する。ただし、その述語の性格は言語によってかなりの違いを示す。まず、述語の文中における位置からみると、文末にたつ言語(日本語など)、文中にたつ言語(英語など)、文頭にたつ言語(多少問題はあるが、アラビア語)がある。また、日本語はそうとはいえないが、その述語の形の一部が文中の特定の部分(たとえば、その述語の表す属性や動作の主体であるものを表す部分。いわゆる「主語」)となんらかの文法的呼応(たとえば「性の一致」)を示す言語も数多い。また、日本語のように述語だけで正規の文が形成されうる言語と、数は少ないがそうでない言語(たとえば英語)がある。以上は、平叙文についてであるが、疑問文や命令文その他の場合も、述語といえるものが一般に認められる。ただし、言語によっては、平叙文の述語とかなり異なる性格を示す場合がある。こうした文の述語をも含めて、一般的に述語というものをどう考えるかは、一般言語学的にも個別言語の研究のうえでもむずかしい問題である。平叙文の場合だけを考えても、どこからどこまでが述語なのかという問題にぶつかることがある。たとえば、日本語の「熱が出たんです」という文においては、「犬です」などという文と同じように、その全体が同時に述語であるのか、「出たんです」だけが述語であるのか、どちらの解釈にもそれなりの理由をつけることができる。英語の場合では、述語動詞が他動詞の場合、後続する目的語とその動詞との結び付きが強い(その間に他の成分が介在しにくい)ため、目的語まで含めた形で述語とする考え方がありうるし、be動詞やhave動詞と分詞からなる述語の場合、今度はその間に副詞などが介在しうるので、その問題をどう考えるかなどの問題が生ずる。このように、述語についても未解決の問題が多々残されている。なお、「述語」は論理学用語としても用いられる。すなわち、「AはBである」という命題の「Bである」の部分をさすわけである。
[湯川恭敏]
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…文法や論理学の用語。その概略については,日本ではすでに小学校の国語教育で〈何が(は)どうする〉〈何が(は)どんなだ〉〈何が(は)何だ〉の〈何が(は)〉に当たるものを主語,〈どうする〉〈どんなだ〉〈何だ〉に当たるものを述語という,と教授するほどで,一般にも周知の用語である。だが,特に文法上の主語は,多少掘り下げて考えると,さほど明快な概念ではなく,特定の一言語についてさえ,研究者によってとらえ方に差があることが少なくない。…
…このほか,副詞,連体詞,代名詞,接続詞,感動詞などがふつう日本語の品詞としてあげられる。品詞
[基本文型と語順]
文の骨組みは,どの言語でも,動作,できごと,状態,物の性質などを表す述語を中心として組み立てられる。述語が他動詞の場合,その文の中心的要素はその動詞(V)と,その動作主(S),その動作の受け手(O)の三つである点はどの言語にも共通していることと思われるので,言語類型論では,その3要素の配列順から,世界の諸言語を類型化している。…
…そして(1)の型の命題(判断)は肯定命題(肯定判断),(2)は否定命題(否定判断)と呼ばれる。(1)においてSは主語subject,Pは述語predicateと呼ばれ,〈is(である)〉は二つの名辞(概念)をつなぐものとして繫(けい)辞またはコプラcopulaと呼ばれている。さて,まず主語Sが個体のとき,(1),(2)は単称命題といわれる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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