日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユミコア」の意味・わかりやすい解説
ユミコア
ゆみこあ
N.V. Umicore S.A.
ベルギーに本社を置く世界最大級の非鉄金属会社。以前はユニオン・ミニエールUnion Minière s.a.(UM)という社名であったが、2001年に現在の名称に変更した。
ベルギーの持株会社ソシエテ・ジェネラル・ド・ベルジックSociété Générale de Belgique(SGB)の非鉄金属部門の中核企業で、1906年アフリカのコンゴ自由国(コンゴ独立国。当時のベルギー国王の私的植民地)にユニオン・ミニエール・デュ・オート・カタンガUnion Minière du Haute Katanga(UMHK)として設立された。当初は銅鉱石の採掘を行っていたが、1911年から精錬事業を開始した。1960年コンゴがベルギーから独立するとともに本社をベルギーに移した。1968年コンゴ政府によって会社資産が国有化されたため、国外に新たな事業展開の場を求め、社名をユニオン・ミニエールと改称した。しかし、その後経営悪化が続いたため、1981年に会社は解散したが、その全資産をSGBが引き受け、同年新たに、SGBの100%出資の子会社として、ブリュッセルに新ユニオン・ミニエールが設立された。1998年末時点でSGBが株式の25.3%を保有していた。2001年に現在の名称に変更。2003年には触媒製造部門を強化するためドイツのプレシャス・メタルズ社を買収し、2005年には利益率が低かった銅生産部門を分離した。
事業は世界各国で展開されている。亜鉛部門では精錬・製品化事業や亜鉛化学製品の製造をベルギー、オランダ、イギリスをはじめ10か国で展開。金銀など貴金属部門ではベルギーなど3か国に製造拠点がある。合成ダイヤ・ダイヤ装着機器製造はアメリカ、スウェーデン、中国など13か国で行い、天然ダイヤはムブジ・マイ(コンゴ民主共和国)で生産している。コバルト、ゲルマニウム部門はベルギー、アメリカ、カナダ、南アフリカなど6か国に工場があり、光電子金属部門ではベルギー、フランスなど3か国で生産しており、また日本では筑波(つくば)事業所でバッテリー用ニッケル、コバルトなどを製造している。技術・サービス部門はユミコアを構成する各事業の投資プロジェクトや、生産ノウハウの第三者への移転、グループの物流などを行っている。2009年の売上高は69億ユーロ、営業利益は2億6000万ユーロ。従業員数1万3700人。日本法人としてユミコアジャパン株式会社がある。
[湯沢 威・田村隆司]