日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨーロッパ検察協力機構」の意味・わかりやすい解説
ヨーロッパ検察協力機構
よーろっぱけんさつきょうりょくきこう
European Union's Judicial Cooperation Unit
EU(ヨーロッパ連合)域内の重大な国際犯罪や組織犯罪に関する訴追や捜査について、関係するEU諸国の検察間の協調と協力を促進し強化するために置かれたEUの専門機関。ユーロジャスト(Eurojust)ともよばれる。2002年に設置された。所在地はオランダのハーグ。EU各国1名の検察官等の出向者で構成する。対象犯罪は、テロ、違法薬物や武器の密輸、人身売買、移民の密入国幇助(ほうじょ)、通貨偽造、詐欺、資金洗浄、サイバー犯罪、EU補助金詐取、環境汚染犯罪などである。
ユーロジャスト自体には、捜査や訴追の権限はない。EU各国の訴追を担当する当局から共助の要請を受けて、関係EU諸国の関係当局に捜査や訴追を要請する仲介役を務める。また複数のEU諸国にわたる越境的犯罪については、関係国のなかから犯罪者を集中して訴追する担当国を決め、そこに各国が犯罪人を引き渡して担当国の検察の訴追を可能にするよう促すといった、EU諸国間の訴追調整と相互協力の推進役も務める。このほか、EU域外国(アメリカなど)とユーロジャストとの間に司法共助協定が締結されている場合は、当該域外国とEU諸国の警察や検察との間の司法共助もユーロジャストが仲介する。
なおEU運営条約は、EU補助金詐欺などをEUが独自に訴追するためにEU検察局をユーロジャストから派生させて別途設置する未来像も示している。
[中村民雄 2018年6月19日]