チェコ西部、首都プラハの西北西約15キロメートル、クラドノ近くの村。第二次世界大戦中ここには炭鉱労働者が住んでいたが、ナチス支配下で村人に対する残虐な復讐(ふくしゅう)行為が行われた。その虐殺現場は今日も歴史の証言として保存されている。
1942年5月27日に、ドイツのボヘミア・モラビア保護官代理ハイドリヒReinhard Heydrichが襲われ、6月4日死去すると、犯人庇護(ひご)の疑いもあってヒトラーはリディツェへの復讐を命令した。保護次官・SS(親衛隊)司令官フランクの命令を受け、SS行動隊長ロシュトックは6月9日夜、リディツェを包囲し、成年男子198人を射殺、女子195人を強制収容所に送った(戦後帰還したのは143人)。子供は収容所に入れられたり(90人)、「ドイツ化」のためSS隊員の家族に預けられた(8人)が、戦後消息が確認されたのは16人にすぎない。全家屋は破壊され、リディツェは完全に抹殺された。戦後フランクとロシュトックは死刑に処せられ、リディツェは再建された。
[吉田輝夫]
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