日本大百科全書(ニッポニカ) 「リュッツェラー」の意味・わかりやすい解説
リュッツェラー
りゅっつぇらー
Heinrich Lützeler
(1902―1988)
ドイツの美術学者、美術史家。ボン大学で美術史、文芸学を、ケルン大学のマックス・シェーラーの下で哲学を学ぶ。現象学的方法に基づいて芸術認識のあり方を解明し、素朴で無反省な自然的芸術観察と、それを基礎にしながらも芸術の精神的・創造的意義を把握しようとする自覚的芸術観察を区別し、後者の芸術観察を理論的に反省することによって科学的・歴史的な芸術認識が可能になるとした。また芸術様式の体系的研究を行い、造形芸術の発展は三つの基礎様式―「構築的」「彫塑的」「絵画的」―が周期的に交替する様式の律動として理解されるとした。1930年ボン大学哲学科私講師となるが、ナチス批判によって40年大学から追放された。45年美術史学科の教授として復職、70年の退官まで二度哲学部長を務めた。51年以降『美学と一般芸術学雑誌』主幹の地位にあった。主著に『芸術認識の諸形式』Formen der Kunsterkenntnis(1924)、『芸術の基本様式』Grundstile der Kunst(1934)、『芸術経験と芸術学』Kunsterfahrung und Kunstwissenschaft(1975)などがある。
[川上明孝]
『リュッツェラー著、川上実訳『芸術への道』(1967・美術出版社)』