リーバス公爵(読み)リーバスこうしゃく(その他表記)Duque de Rivas

改訂新版 世界大百科事典 「リーバス公爵」の意味・わかりやすい解説

リーバス公爵 (リーバスこうしゃく)
Duque de Rivas
生没年:1791-1865

スペインの詩人劇作家。本名Ángel de Seavedra。初期の作品には新古典主義的傾向がみられたが,フランス,イギリス,イタリアで亡命生活を送るうち,ロマン主義の洗礼を受けた。過激な自由主義を唱え,政治にも積極的に参加したが,亡命から帰国後,穏健さが加わる。スペイン演劇の《エルナニ》といわれる《ドン・アルバロもしくは宿命の力》(1835)でスペインにロマン主義旋風を巻き起こす。インカ子孫である闘牛士ドン・アルバロと侯爵の令嬢ドニャ・レオノールとの身分違いによる悲恋を描いたもので,プロットは現実離れしているが,ロマン主義の典型的要素がふんだんに盛り込まれている。1834年パリで出版された勇壮な物語詩《捨てられたムーア人》も代表作の一つで,不運な勇者ムダラとともに11世紀の二つのスペイン,すなわちキリスト教スペインとイスラム・スペインを対比させている。ほかに,伝統的なロマンセ形式に新しいいぶきを与え,持ちまえの絵画的能力を反映させた《歴史詩集》(1841)も注目すべき作品である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のリーバス公爵の言及

【スペイン演劇】より


[19世紀]
 新古典主義の形式主義に対する反動は,19世紀前半のロマン主義となって現れる。リーバス公爵,ガルシア・グティエレスAntonio García Gutiérrez(1813‐84),アルツェンブスクJuan Eugenio Hartzenbusch(1806‐80),ソリーリャなどがその代表的作家である。彼らは運命論者であり,また,好んで伝説や歴史に題材を求めた。…

【スペイン文学】より

…革命運動と激しい恋の末に夭逝したJ.deエスプロンセーダの,ドン・フアン伝説を扱った物語詩《サラマンカの学生》と,神秘的ともいえる深遠な詩語を操った孤独な夢想詩人G.A.ベッケルの《抒情詩集》は文学史に残る傑作である。演劇では1835年に上演されたリーバス公爵の《ドン・アルバロ》が,ビクトル・ユゴーの《エルナニ》のスペイン版ともいうべき,ロマン主義の勝利を決定づける作品であった。また,詩と演劇の両方においてロマン主義の寵児であったJ.ソリーリャの《ドン・フアン・テノーリオ》は,今日でも絶えず上演されているドン・フアン劇の名作である。…

※「リーバス公爵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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