改訂新版 世界大百科事典 「リーバス公爵」の意味・わかりやすい解説
リーバス公爵 (リーバスこうしゃく)
Duque de Rivas
生没年:1791-1865
スペインの詩人,劇作家。本名Ángel de Seavedra。初期の作品には新古典主義的傾向がみられたが,フランス,イギリス,イタリアで亡命生活を送るうち,ロマン主義の洗礼を受けた。過激な自由主義を唱え,政治にも積極的に参加したが,亡命から帰国後,穏健さが加わる。スペイン演劇の《エルナニ》といわれる《ドン・アルバロもしくは宿命の力》(1835)でスペインにロマン主義旋風を巻き起こす。インカの子孫である闘牛士ドン・アルバロと侯爵の令嬢ドニャ・レオノールとの身分違いによる悲恋を描いたもので,プロットは現実離れしているが,ロマン主義の典型的要素がふんだんに盛り込まれている。1834年パリで出版された勇壮な物語詩《捨てられたムーア人》も代表作の一つで,不運な勇者ムダラとともに11世紀の二つのスペイン,すなわちキリスト教スペインとイスラム・スペインを対比させている。ほかに,伝統的なロマンセ形式に新しいいぶきを与え,持ちまえの絵画的能力を反映させた《歴史詩集》(1841)も注目すべき作品である。
執筆者:志賀 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報