1994年に登録されたルクセンブルクの世界遺産(文化遺産)で、首都ルクセンブルク市の丘の上にある旧市街と要塞。アルデンヌ家のジーゲフロイド伯爵は、963年、アルゼット川とペトリュス川に挟まれた岩山の上に、城を建造した。ここは、もともと天然の要塞であったが、14世紀頃、ヴェンツェル2世によって環状の城壁が造られ、その内側に沿って市街地が拡張された。ルクセンブルクは軍事戦略上、重要な位置にあったため、1443年以降約400年にわたり、ブルゴーニュ家、スペイン、フランス、オーストリアの支配を受け、1839年に独立を果たした。1867年のロンドン条約でルクセンブルクの独立と永世中立が確認され、その代償として堅牢な要塞は取り壊されることになったが、1948年に永世中立を放棄すると、撤去作業は中止された。旧市街には、ヴェンツェルの環状城壁の一部が今も残り、ヨーロッパの代表的ゴシック建築といわれるノートル・ダム大聖堂(1621年建造)や、中央ヨーロッパでは珍しいイスパノ・モレスク様式の浮き彫りが特徴の大公宮殿などが、かつての要塞都市の繁栄ぶりを今に伝えている。このような文化的景観が評価され、世界遺産に登録された。◇英名はCity of Luxembourg : its Old Quarters and Fortifications