日本大百科全書(ニッポニカ) 「レソトサウルス」の意味・わかりやすい解説
レソトサウルス
れそとさうるす
lesothosaur
[学] Lesothosaurus diagnosticus
鳥盤目に属する原始的な恐竜。全長約90センチメートルの二肢歩行の草食恐竜。南アフリカのジュラ紀前期、約1億9960万年~1億8960万年前の地層から産出した。属名は、産地名のレソトに基づいた「レソト王国のトカゲ」という意味。レソトサウルスは小形できゃしゃなつくりをした恐竜で、1992年にはレソトサウルスは閉鎖突起と奥まった歯列の両者をもっているということが確認され、鳥脚類(ちょうきゃくるい)であると指摘された。しかし、骨格と結び付いた完全頭骨が発見されるまでは、鳥脚類以外のものとして取り扱われている。レソトサウルスの小さな頭は現生のリクイグアナのように木の葉型の歯をもつが、後者と異なり、歯根が長く、顎骨(がくこつ)の穴にしっかりとはまっていた。とはいえ、植物をそしゃくすることはできず、かみちぎるだけであった。レソトサウルスは、半砂漠に生息し、四肢をついて、低木の下のほうから葉や若枝をちぎって食べていたのであろう。つねに神経質に周りの敵に気をつけ、いつでも逃げられるよう構えていた。尾が長く腱(けん)で強化されていて、バランスをとりながら、後肢ですばやく走ることができた。後肢は細く長く、脛骨(けいこつ)が長く伸びていたのである。レソトサウルスの特徴は鳥盤類のもっとも初期段階を表している。三畳紀後期には、すでにそしゃく能力のあるピサノサウルスPisanosaurusが現れているので、鳥盤類のいろいろなタイプの分化は、非常に早い時代に起こっていたことがわかっている。
[小畠郁生]