改訂新版 世界大百科事典 「ロターリ」の意味・わかりやすい解説
ロターリ
Rothari
生没年:?-652
ランゴバルド王国の王。在位636-652年。カトリックへの改宗に先立つ時期のこの部族の歴代の王の中では,ゲルマン人支配者の伝統とアリウス派キリスト教の信仰を固く守り続けたほとんど最後の人物で,その厳格な支配にまつわる挿話は数多い。イタリア北部に残存したビザンティン帝国領を征服,領有したほか,内政面でも王国の基礎固めに尽力したが,何よりも彼の名を高からしめる結果となったのは,この部族の初の立法事業の成果である〈ロターリ王法典Edictum Rothari〉(643)である。ラテン語で書かれた388ヵ条に及ぶこの法典は,ゲルマン古来の法慣習を色濃くとどめているといわれるが,その明確で体系的な構成からみても,法典編纂事業としてはむしろローマ風の高い水準を示すものといわれる。
執筆者:中村 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報