ロマン派精神医学(読み)ロマンはせいしんいがく(その他表記)romantische Psychiatrie[ドイツ]

改訂新版 世界大百科事典 「ロマン派精神医学」の意味・わかりやすい解説

ロマン派精神医学 (ロマンはせいしんいがく)
romantische Psychiatrie[ドイツ]

19世紀前半のドイツに現れた心理主義的傾向の強い精神医学で,精神病は文字どおり心の原因で起こり,身体的病変をともなうにしても二次的な結果にすぎないと主張した。ゆえにこの派の人々を心理主義者Psychikerと呼ぶこともある。中心人物はハインロートJ.C.A.Heinroth(1773-1843)とイーデラーK.W.Ideler(1795-1860)の2人で,前者はとくに人間の罪を重く見る神学的論調をかかげ,後者は満たされない情念を基本とする人生史的立場をとったが,これらはいずれも解剖学的・生理学的側面を重視する身体主義者Somatikerからはげしく攻撃され,両派のあいだに盛んな論争が続いた。19世紀も後半に入って,精神医学の分野でも自然科学的厳密さが求められるようになると,ロマン派精神医学の勢力は急速におとろえ,主導権をグリージンガーらの身体主義者にゆずることになる。しかし,人間の心理を深く洞察し,病者の観念内容にも一貫した意味を探ろうとした功績は大きく,現代の力動精神医学の遠い先駆をそこに見るのもまちがいではない。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

関連語 宮本

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む