ローマ法典(読み)ローマほうてん(英語表記)leges Romanae

改訂新版 世界大百科事典 「ローマ法典」の意味・わかりやすい解説

ローマ法典 (ローマほうてん)
leges Romanae

ゲルマン諸部族国家において(いわゆる属人法主義のもとに)ゲルマン部族民に適用される部族法典のほかに,国内に住むローマ人のために編纂された法典(法記録)--ローマ人法典--と,ゲルマン人・ローマ人両者に共通して適用されるもので,圧倒的にローマ法に依拠している法典(法記録)とをいう。ローマ人法典として何よりも重要なのは,506年にアラリック2世が発布した西ゴート・ローマ法典Lex Romana Visigothorum(中世にはアラリック王抄典Breviarium Alariciと呼ばれた)である。これはユスティニアヌス帝以前のローマ諸法源(ローマ卑俗法)を未加工のまま一つにまとめたものであるが,その後フランク人によって征服された南ガリアにおいて通用力をもち続け,またおよそ中世にまでローマ法を伝えた点で特別の重要性を有する。ほかに,506年より前にグンドバート王の発布したブルグント・ローマ法典Lex Romana Burgundionumがある。ゲルマン人・ローマ人共通のものとしては,クールレティエン地方で765年より前に成立したクールレティエン・ローマ法典Lex Romana Raetica Curiensisがあるが,これは一つの私的作品であり,アラリック王抄典の抜粋と目されるものである。成立事情をめぐってきわめて争いのあるテオドリック王法典Edictum Theodericiもこのグループに入れられる。ローマ法典がローマ卑俗法の認識のために貴重な資料であることは疑いないが,これが中世初期の法生活にとって具体的にいかなる意義を有したかという問題は,部族法典との関係についての種々の研究にもかかわらず,なお今後の解明にまたねばならない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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