ワッケンローダー溶液(読み)ワッケンローダーようえき(英語表記)Wackenroder's liquid(solution)

改訂新版 世界大百科事典 「ワッケンローダー溶液」の意味・わかりやすい解説

ワッケンローダー溶液 (ワッケンローダーようえき)
Wackenroder's liquid(solution)

1845年,ドイツの薬学者,化学者のワッケンローダーHeinrich Wilhelm Ferdinand Wackenroder(1798-1854)によってつくられた,二酸化硫黄の濃厚な水溶液に0℃以下の低温で硫化水素を通じて得られるコロイド状硫黄を含む白濁液をいう。コロイド状硫黄は,

 2H2S+SO2─→2H2O+3S

の反応で生じ,この溶液には

 H2S+3SO2─→H2S4O6

 2H2S+6SO2─→H2S3O6+H2S5O6

 3H2S+9SO2─→H2S2O6+2H2S5O6

等の反応によって,一般式[O3SSnSO32⁻(n=1,2,……)で示される各種のポリチオン酸が含まれる。H2S:SO2=2:1のときは硫酸が主生成物,H2S:SO2=1:1のときはH2S5O6が主生成物。温度を上げるとやはりH2S5O6の生成に都合がよい。この混合溶液からそれぞれのポリチオン酸塩を分離することができる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

大臣政務官

各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...

大臣政務官の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android