メンデルスゾーン作曲のピアノ小曲集。全八巻、48曲からなる。原標題は「歌詞をもたない歌曲」の意味で、その名のとおり、多くは歌曲を思わせる美しい旋律と、しばしば分散和音の形をとる伴奏音型をもつ。作曲は広範な時期にわたり、第一巻(作品19)は1830年に書き始められ、最後の第八巻(作品102)は1845年に完成した。作品の内容と書法自体はロマン派の音楽作品の多くと変わるところはないが、19世紀前半において、シューベルトの即興曲とともに小品形式のピアノ作品による主観的自己表現を打ち出し、後の時代へ多大な影響を与えた意義は大きい。学習用としても広く用いられている。単独で演奏される曲も多いが、なかでも「春の歌」と題された第30曲(作品62‐6)はもっとも有名で、さまざまな編曲によっても親しまれている。
[三宅幸夫]
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