日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワンダー・ブック」の意味・わかりやすい解説
ワンダー・ブック
わんだーぶっく
A Wonder-Book
アメリカの作家N・ホーソンが、当時7歳の長女と5歳の長男を念頭に置きながら執筆した児童物語集。1851年刊。メドゥサ、ミダス王、パンドラの箱など、ギリシア・ローマの神話を自由に語り直した物語六編を収録。若き日の作者を思わせるような青年が親戚(しんせき)の子供たちに話を聞かせるという枠組みを設定、それぞれの物語の前後で青年と子供たちが交わす生き生きした会話が、作品に魅力を添えている。53年刊行の姉妹編『タングルウッドの物語』Tanglewood Talesも、テセウスのミノタウロス退治、ユリシーズとキルケなどギリシア神話やホメロスに取材した六編の物語からなる。この2冊はアメリカにおける児童文学の古典の位置を占めている。
[島田太郎]
『三宅幾三郎訳『ワンダ・ブック』(岩波少年文庫)』▽『R・アーサー絵、野原とりこ訳『ワンダー・ブック』(1983・立風書房)』