ギリシア神話で,人類最初の女。プロメテウスが天上の火を盗んで人間に与えたとき,怒ったゼウスは,人間どもにその恩恵の代償を支払わせるべく,鍛冶の神ヘファイストスに命じて粘土で女を造らせ,他の神々から女性としての魅力や美しい衣装などを授けられた彼女をパンドラ(〈すべての贈物を与えられた女〉の意)と名づけて地上に下し,プロメテウスの弟のエピメテウスに与えた。このとき彼女は神々からのみやげとして1個の壺(いわゆる〈パンドラの箱〉)を持参していたが,好奇心にかられた彼女がそのふたを開けると,中からあらゆる災いが飛び出して四方に散った。ただひとつ〈希望〉だけは,急いで彼女がふたを閉じたため,壺の底に残ったという。以上は前8世紀の詩人ヘシオドスが伝えるパンドラ物語であるが,本来の彼女は大地女神で,その名も〈すべての贈物を与える女〉の意であったと考えられている。
執筆者:水谷 智洋
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ギリシア神話における地上最初の女。プロメテウスが天上の火を盗んで人間に与えたのを怒ったゼウスは、仕返しのため人間に災いをもたらせようと、ヘファイストスに命じて泥から人間の女をつくらせた。神々はこれにさまざまな性格や技量を与え、飾り物もつけて、プロメテウスの弟エピメテウスのところへ連れていかせた。パンドラとは、「神々からすべての贈り物を与えられた女」の意とも、「すべての神々からの人間への贈り物」の意とも解釈される。エピメテウスは、かねてより兄プロメテウスからゼウスの贈り物を受けないよう戒められていたにもかかわらず、美しいパンドラを見るとそれを忘れ、妻にしてしまう。こうしてゼウスは家の蓄えを片っ端から食い尽くす女という種族を人間界へ送り出し、人間どもに災いをまき散らすことができた。またパンドラは、神々から甕(かめ)(または手箱)をもらってきた。その中にはあらゆる災いや害悪が詰まっていたので、彼女は見てはいけないと忠告されていたが、好奇心から開けてしまい、それらはたちまち四方に飛び散った。このときから人類は、さまざまな病苦と災難などの不幸にみまわれることになる。パンドラはあわてて蓋(ふた)をしたが、その中にはむなしい「希望」だけが残ったという。
[伊藤照夫]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…葉柄がやや長いが,強健で生長が速く,中鉢~大鉢の観葉種として普及している。市場ではパンドラの通称で呼ばれる。フィロデンドロン・スカンデンス・オキシカルジウムP.scandens K.Koch et Sello ssp.oxycardium (Schott) Buntingはメキシコ原産のつる性種で,細い茎に長ハート形の葉を密生する。…
…プロメテウスは火を盗み出し人間に与えた。それに気づいたゼウスは工匠神ヘファイストスに命じて粘土から乙女の姿を創らせ,神々皆が贈物をしたところからパンドラ(すべての贈物である女)と名づけた。彼女が下界に持参した甕のふたをあけると,病気,労苦その他の災禍が出て世に広まった。…
※「パンドラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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