パンドラ(読み)ぱんどら(英語表記)Pandora

翻訳|Pandora

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パンドラ」の意味・わかりやすい解説

パンドラ
ぱんどら
Pandora

ギリシア神話における地上最初の女。プロメテウス天上の火を盗んで人間に与えたのを怒ったゼウスは、仕返しのため人間に災いをもたらせようと、ヘファイストスに命じて泥から人間の女をつくらせた。神々はこれにさまざまな性格や技量を与え、飾り物もつけて、プロメテウスの弟エピメテウスのところへ連れていかせた。パンドラとは、「神々からすべての贈り物を与えられた女」の意とも、「すべての神々からの人間への贈り物」の意とも解釈される。エピメテウスは、かねてより兄プロメテウスからゼウスの贈り物を受けないよう戒められていたにもかかわらず、美しいパンドラを見るとそれを忘れ、妻にしてしまう。こうしてゼウスは家の蓄えを片っ端から食い尽くす女という種族を人間界へ送り出し、人間どもに災いをまき散らすことができた。またパンドラは、神々から甕(かめ)(または手箱)をもらってきた。その中にはあらゆる災いや害悪が詰まっていたので、彼女は見てはいけないと忠告されていたが、好奇心から開けてしまい、それらはたちまち四方に飛び散った。このときから人類は、さまざまな病苦災難などの不幸にみまわれることになる。パンドラはあわてて蓋(ふた)をしたが、その中にはむなしい「希望」だけが残ったという。

[伊藤照夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パンドラ」の意味・わかりやすい解説

パンドラ
Pandora

ギリシア神話の人物。天上の火を盗んで人類に与えたプロメテウスの罪を罰するため,ゼウスがヘファイストスに命じてつくらせた最初の女性。絶世の美女であるうえに,アフロディテアテナなどによって魅力と飾りでいやがうえにも美しく装われていたが,内部にはへルメスによって恥知らずの心と虚言盗人性質を入れられていた。プロメテウスの弟エピメテウスが,兄の戒めを忘れ,ゼウスから贈られた彼女を花嫁としてもらい受けてしまったために,以後人類は,すべての不幸の原因となる女たちとともに暮さなければならなくなったとも,パンドラが,中にすべての災いの詰っていたかめのふたを取り,世界中に災いをまき散らしたことが,人類の苦しみの原因であるともいわれる。パンドラがふたを閉めたとき,希望だけがかめの中に残ったという。

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