日本大百科全書(ニッポニカ) 「キルケ」の意味・わかりやすい解説
キルケ
きるけ
Kirke
ギリシア神話の魔女。また女神、ニンフともみなされる。太陽神ヘリオスとオケアノスの娘ペルセ(またはペルセイス)との娘。ホメロスによれば、伝説上の島アイアイア(後代ラティウム近辺のキルケイイ岬と目された)に住み、そのすみかは魔力によって野獣に変えられた人間たちで取り囲まれていた。ここに漂着したオデュッセウスは、探索に出した部下をブタに変えられてしまうが、自らはヘルメス神から与えられた薬草のおかげで魔術を免れ、部下を元の姿に戻すことにも成功した。そしてのちの1年間はこの島に滞在してキルケと同棲(どうせい)生活を送り、1子テレゴノスを得たが、ヘシオドスでは、アグリオスとラティヌスの2子が生まれたことになっている。またアルゴ船物語との関係では、キルケは姪(めい)にあたるメデイアがイアソンとともにこの島へやってきたとき、その弟アプシルトス殺害の罪を浄(きよ)めてやったとされている。
[丹下和彦]