日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワード・レオナード方式」の意味・わかりやすい解説
ワード・レオナード方式
わーどれおなーどほうしき
Ward Leonard system
直流電動機の速度を広範囲に制御する方式の一つ。アメリカのハリー・ワード・レオナードHarry Ward Leonard(1861―1915)が発明し、1891年に特許を取得した。直流発電機の電圧を変化させることにより直流電動機の速度制御をする方式である。この方式は20世紀前半の可変速電動機に広く使われた。
原動機で、これには三相誘導電動機または三相同期電動機を用いることが多い。励磁母線はMおよびGの励磁を行うための定電圧直流電源である。発電機の励磁電源は電圧値が広く変えられ、極性も変更できるようにしておく。他励直流電動機の回転速度nは、電機子に加える電圧に比例し、励磁の強さにほぼ反比例する性質があるから、Mの速度を広範囲に変えるには、Mの励磁を一定にしておき、G側の励磁を0から最大まで変えればよい。Mを逆方向に回転させるには、Gの励磁の向きを反対にする。Mの電圧が許容値に達したあとは速度が最高になるが、Mの励磁の加減も行えばさらに速度をあげることもできる。
はワード・レオナード方式の基本回路図である。Mが可変速度で運転しようとする他励直流電動機、GはMに専用の他励直流発電機、PはGを駆動するためのワード・レオナード方式は高度の制御性能をもつが、専用の発電機を置くので設備費が高価であり、据え付け面積が広い。そのため、直流発電機のかわりにサイリスタを含む静止電力変換装置を用いたサイリスタレオナードが使用されるようになった。その後、パワーエレクトロニクスの進歩により交流電動機によって速度制御することが多くなり、日本ではレオナード方式による制御および直流電動機そのものがあまり使われなくなった。
[磯部直吉・森本雅之]