日本大百科全書(ニッポニカ) 「アジア開発基金」の意味・わかりやすい解説
アジア開発基金
あじあかいはつききん
Asian Development Fund
略称ADF。アジア・太平洋地域の開発途上国に開発資金を融資するために設けられた特別基金で、アジア開発銀行(ADB)が業務を行っている。アジア開発銀行の通常資金による融資は準コマーシャル・ベースであるため開発途上国の負担が重く、また量的にも不十分だったので、これを補完するものとしてADFの設立が1973年4月のアジア開発銀行年次総会で決定され、1974年6月から運営が開始された。1979年には、1968年からADBに設けられていた多目的特別基金も併合することとなった。最貧困国を対象としているため、融資条件は、無利子、手数料1~1.5%、償還期間24年または32年と緩やかなローンである。2008年末現在、加盟32か国から拠出されている原資は計315億ドル相当に上り、日本は最大の出資国である。ほかの大手出資国としてアメリカ、ドイツ、カナダ、オーストラリア、フランス、イギリスがある。他方、2005~2008年6月にかけてバングラデシュ、べトナム、パキスタンなど26の開発途上国が、166件のプロジェクトで計59億3690万ドルの融資・助成金を受けている。部門別ではマルチセクター(25.5%)、運輸・通信(22.5%)、教育(11.5%)、農業・天然資源(11.4%)、上下水道・廃棄物管理(9.4%)などとなっている。
[秋山憲治]
『アジア開発銀行著、吉田恒昭監訳『アジア変革への挑戦』(1998・東洋経済新報社)』