アブー・タンマーム(読み)あぶーたんまーむ(英語表記)Abū Tammām

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブー・タンマーム」の意味・わかりやすい解説

アブー・タンマーム
あぶーたんまーむ
Abū Tammām
(788ころ―846ころ)

アラブ詩人シリアのダマスカス近郊に生まれる。エジプトアルメニアアゼルバイジャンイランの地を転々とした。アッバース朝第7代カリフ、マームーン、8代ムータシムをはじめ将軍諸侯をたたえる詩や武勇を称賛する詩をつくった。編詩集に『ハマーサ』(勇壮)があり、自由と剛勇をたたえた多くの傑作が収められている。アラブ文学史上最大の詩人の一人。

[内記良一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アブー・タンマーム」の意味・わかりやすい解説

アブー・タンマーム
Abū Tammām, Ḥabīb ibn Aws

[生]804頃.シリア,ジャーシム/マンビジュ
[没]845頃.モスル
アラブの詩人。エジプトその他の地を遊歴し,のちアッバース朝第8代カリフ,ムータシムに仕えた。小アジア遠征軍に加わり,戦争詩に秀作が多い。彼が編んだ『勇敢詩集』 Dīwān al-ḥamāsaは多くの詩人の作を集めた名詩選で,10部に分れ,第1部が全体のほぼ半分を占め,勇気に関する詩を集めている。

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世界大百科事典(旧版)内のアブー・タンマームの言及

【アラブ文学】より

…多様な主題に関し,バディーに毒されず天才的な詩作を行ったのはアブー・ヌワースで,特に酒,狩猟,風刺,頌詩などに名作が多い。これらの詩人がペルシア風の豊かな社会生活を詩に託して表現したのに対し,9世紀に入るとアブー・タンマームAbū Tammām(804‐843),イブン・アッルーミーIbn al‐Rūmī(836‐896),ブフトリーal‐Buḥtrī(821‐897)などが現れて,ギリシア文化を身につけ内省的思想詩をものにした。イブン・アッルーミーはカシーダ全体の理論的一貫性を創意し,アブー・タンマームは脆弱化したバディー流に力強いジャーヒリーヤ風の詩法を加味して,大帝国のカリフにふさわしい荘重な頌詩を作った。…

※「アブー・タンマーム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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