アルト(Roberto Arlt)(読み)あると(英語表記)Roberto Arlt

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

アルト(Roberto Arlt)
あると
Roberto Arlt
(1900―1942)

アルゼンチンの小説家、劇作家移民の子として生まれる。様々な職についたあと、ジャーナリズムに入り、社会主義、写実主義作家たち、いわゆる「ボエド・グループ」と親交を結ぶ。1926年、都市に住む人間の倫理観、絶望感を描いた自伝的色彩の濃い小説『怒れる玩具(がんぐ)』を発表。その後も、ブエノス・アイレスを舞台に、都市と住民というテーマに風刺を交え、幻想的な雰囲気を漂わせさえする小説『七人の狂人』(1929)、『火焔(かえん)放射器』(1931)、短編集『傴僂(せむし)』(1933)などを出すが、やがて戯曲に専念し、空想世界に閉じこもる少女を描いた『三億』(1932)、妻を殺した劇作家が殺人ありさまを戯曲にする『幻想を作る男』(1936)などの戯曲を発表して演劇界に新風をもたらした。

[安藤哲行]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例