エブゲーニー・オネーギン(その他表記)Evgenii Onegin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

エブゲーニー・オネーギン
Evgenii Onegin

ロシアの作家 A.プーシキンの韻文小説。 1823年から足かけ8年かけて執筆され,数回に分けて発表された。恋し恋される者の立場が逆転する筋を中心に据えながら,19世紀初頭のロシア社会をくまなく映し出して,批評家 V.ベリンスキーに「ロシア生活の百科事典であり,真に国民的な作品」と言わせた。主人公オネーギンは,あふれる才能見識を現実生活には生かしえない,無為徒食の生活をおくる「余計者」であり,以後ロシア文学の「余計者の系譜」の祖となり,一方女主人公タチヤーナは,ロシアの奥深い森林から生れたような,純朴清楚のうちにも高い道徳と熱烈な愛情を秘めたロシア女性の典型で,その後のロシア文学における美しい女性像の源流となった。この作品の出現によって,ロシア文学はリアリズムを確立したといえる。

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