日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
エルンスト(Richard R. Ernst)
えるんすと
Richard R. Ernst
(1933―2021)
スイスの化学者。ウィンタートゥール生まれ。1956年スイス連邦工科大学を卒業。同大学に進学し、核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)を用いた研究を行い1962年に博士号を取得。1963年よりアメリカのバリアン協会研究員となる。当時のNMRは、原子核の性質を調べるといったように理論物理学で利用される道具であったが、より実践的な適用の探索を始める。1964年に、フーリエ変換NMR(FT‐NMR)の実験に初めて成功する。1968年スイスに帰国し、スイス連邦工科大学講師。1976年に同大学教授となる。
NMRの感度をあげるくふうを重ね、1970年代には二次元NMRを開発した。これによりタンパク質や核酸などの複雑な生体分子の溶液中での三次元構造解析が可能となった。フーリエ変換を組み合わせたフーリエ変換二次元NMRは、医学分野で使われるMRI(magnetic resonance imaging)へ応用されている。これらの功績により、1991年にノーベル化学賞を受賞した。
[馬場錬成]
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