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核磁気共鳴 かくじききょうめいnuclear magnetic resonance

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

核磁気共鳴
かくじききょうめい
nuclear magnetic resonance

原子核の核スピン共鳴で,通常は,NMRと略称される。この原理は静磁場中に置かれた核スピンのゼーマン効果によって分裂したエネルギー準位の差に相当するエネルギーをもつ電磁波を加え,その吸収を測定するもので,これは複素磁化率の虚数部の測定にあたる。電磁波の周波数,または磁場の大きさを連続的に変化させたときの吸収の位置 (化学シフト) ,吸収の形,幅,強度などにより,核スピンの置かれている環境の推定,さらに核スピンが含まれる物質の構造などを推定することができる。また核磁気誘導スピンエコー,二重共鳴 (エンドール) ,あるいは分子線磁気共鳴,原子線磁気共鳴など,種々の物質の状態に関してさまざまな推定方法がある。

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百科事典マイペディアの解説

核磁気共鳴【かくじききょうめい】

磁気共鳴

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世界大百科事典 第2版の解説

かくじききょうめい【核磁気共鳴 nuclear magnetic resonance】

略称NMR(またはnmr)。核スピン共鳴nuclear spin resonanceともいう。原子核を構成する陽子,中性子の数がともに偶数である偶偶核ではスピンは0で磁気モーメント(核磁気モーメント)もないが,それ以外の奇奇核,奇偶核,偶奇核ではスピンと磁気モーメントをもつ。これらスピンと磁気モーメントをもつ核を静磁場内に置くと,磁場との相互作用でいくつかのエネルギー準位に分かれる。ここに外部からエネルギー準位間のエネルギー差に相当する周波数と同じ周波数の電磁波を照射すると,共鳴現象を起こし,電磁波のエネルギーの吸収が観測される(これを核磁気共鳴という)。

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大辞林 第三版の解説

かくじききょうめい【核磁気共鳴】

磁場中に置かれた磁気モーメントをもつ原子核が、特定の周波数の電磁波を吸収して、エネルギーの低いスピン状態からエネルギーの高いスピン状態に移り変わること。吸収される電磁波の周波数などから、原子・分子の電子状態などを知ることができる。 NMR 。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

核磁気共鳴
かくじききょうめい

原子核による磁気共鳴のこと。アメリカのラービが分子線による核磁気共鳴を最初に行った。1946年にブロックとパーセルによって、独立に、固体および液体についての核磁気共鳴が観測され、並行して統計熱力学的な理論も建てられ、物性物理学の一つの重要な分野となった。この業績により、52年ブロックとパーセルにノーベル物理学賞が授与された。共鳴周波数は磁界の強さ、核の種類により、数メガヘルツから数百メガヘルツの範囲となる。以下、固体や液体についての核磁気共鳴について記す。
 電子による磁性をもたない物質中の原子核は、磁界が加えられたときには、それぞれの磁気量子数によって複数のレベルに分岐するが、熱平衡にある物質にあっては、これらのレベルのそれぞれを占める核の数は、ボルツマン統計に従ってのAのようにエネルギーの低いレベルほど多くなっており、磁化Mをもつ。この系に磁気共鳴を行わせると相隣るレベルの間に転移がおこるが、下方のレベルほど占有数が多いので転移のおこる数が多く、高周波の強度に従って、のBのように上下のレベルの占有数の差を少なくするような状態で平衡に達する。この状態では、電磁波の定常的な吸収がおこっている。この吸収を測定するのがパーセルの磁気共鳴の検出方法である。さらに強い高周波によって激しい転移をおこさせると、のCのように、上下のレベルを占める数が同じになってしまう(磁化はゼロになる)。この状態では転移はおこっても占有数の変化はなく、電波の吸収もなくなる(飽和)。いま、BとかCの状態のもとで高周波を切ると、系はふたたび元の熱平衡状態のD(Aと同じ)に、時定数(じていすう)T1をもつ指数関数的に戻っていく。このT1をスピン格子(こうし)緩和時間という。なお、吸収と同時に分散現象も生ずるので、その測定から磁気共鳴を観測することもできる(ブロックの検出方法)。また、物質中には核は多く含まれており、それらの間に磁気双極子相互作用があるので、それぞれの磁気レベルは幅をもっており、この幅は共鳴線の幅に寄与する。この幅を時間に変換したときの時定数をスピン・スピン緩和時間T2という。
 電子による磁化のない物質においても、反磁性的な性質はもっているので、磁界がかけられたときには、核の位置にごく微細な影響を及ぼし、共鳴周波数が少し変化する。これはその核を取り囲む分子の構造に依存するので、このわずかな変化を化学シフトという。T1T2、化学シフトは、物質の構造、状態に大いに依存するものであるので、これらの測定から多くの物性的情報が得られ、核磁気共鳴が物性研究の一つの手段として重要なものとなった。当初は前述のように、連続した高周波で観測していたが、1950年代になって高周波パルスを用いる方法(スピン・エコー)が開発され、現在ではこれが主流となっている。
 前述の磁気双極子相互作用は液体中においては分子の速い運動で平均化され、共鳴線の幅はたいへん狭いものとなる。したがって、異なる構造の有機物の共鳴はお互いに分離して観測できる。これを利用して、有機化合物の構造解析用の装置も早くから開発されている。さらに物体の各部各部の共鳴の強度を測定し、コンピュータ・グラフィクスの手法を用いて画像化すると、対象としている核の分布を目の当たりにすることができるようになり、これを利用して医学的な診断に用いる装置(MRI)が1990年代になって急速に進歩し、医療機関には必須(ひっす)のものとなった。このMRIの原理の発見に対して、2003年のノーベル医学生理学賞が、ラウターバーとマンスフィールドに与えられた。[伊藤順吉]
『益田義賀著『核磁気共鳴の基礎』(1985・丸善) ▽荒田洋治著『NMRの書』(2000・丸善) ▽安岡弘志著『岩波講座 物理の世界 ものを見るとらえる3 核磁気共鳴技術』(2002・岩波書店) ▽阿久津秀雄・嶋田一夫・鈴木栄一郎・西村善文編『日本分光学会測定法シリーズ41 NMR分光法――原理から応用まで』(2003・学会出版センター)』

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世界大百科事典内の核磁気共鳴の言及

【化学】より

…近年の高分解能質量分析器は原子質量単位でppmのオーダーの感度をもち,元素分析法の一つとしても利用されている。核磁気共鳴は,もともと核の磁気モーメント測定手段として,ブロッホFelix Bloch(1905‐82)とパーセルEdwards Miles Purcell(1912‐97)によって独立に考案された。しかし共鳴周波数は核の種類だけではなく,その化学的環境にも依存すること(化学シフト)が発見されて以来,核磁気共鳴は化学者によって貪欲に開発された。…

※「核磁気共鳴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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