オーディオ(その他表記)audio

翻訳|audio

デジタル大辞泉 「オーディオ」の意味・読み・例文・類語

オーディオ(audio)

テレビやラジオなどの音声・音響系統。
音楽鑑賞用の音響装置。

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精選版 日本国語大辞典 「オーディオ」の意味・読み・例文・類語

オーディオ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] audio )
  2. 聴覚に関係あるもの。聴覚。テレビやラジオの音声部分。
  3. 音響機器。特に高級なものをいう場合もある。「オーディオ‐マニア」

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改訂新版 世界大百科事典 「オーディオ」の意味・わかりやすい解説

オーディオ
audio

語源はラテン語のaudireで,〈聴く〉という意味から〈可聴周波数範囲にある音の〉という意味で用いられており,一般には音の伝送,記録,再生,聴取について,機器から利用技術までを含めた分野をいう。通常は高品質の音を対象とする分野に絞り,電気音響を利用して音を聴いて楽しむ趣味の面を含めオーディオと称している。高品質の音とは,物理的に信号を忠実に伝送再生できる物理特性が優れた機器システムによる音という意味とともに,好みの面を含めた心象的に優れた音という意味をもつ。

 オーディオの初期のころは技術レベルが低く,物理的音質を向上させることが第1目的となり,雑音やひずみを減らし,周波数帯域やダイナミックレンジを広くする努力がなされてきた。ここにハイファイHi-Fi(high fidelityの略),すなわち高忠実度という用語が生まれた。高忠実度とは伝送システムにおいて入力信号を忠実に伝送して出力信号とする度合が高度であることを表す。この点から見れば,現在の技術レベルは完全に近い段階にきている。しかし,オーディオは音場を取り扱う技術であり,音場を表すいかなる入力信号を作るか,また,出力信号によりいかなる音場を作り,その中で音を聴くかという問題が重要となる。オーディオは原音再生を目的とするともいわれているが,現実に原音とは何を意味するか判然としない。これを原音場の意味に置き換えて,かりに家庭でコンサートホールの音場を物理的に忠実に再生できたとしても,オーディオ鑑賞に満足できる音場にはならないであろう。オーディオの指向するところは,聴取者からいえば自分が聴きたい音を,プログラム制作者からいえば聴取者を魅了する音を創造するところにある。聴取者が聴きたい音といっても多種多様である。松やにがこすれる感じのようなバイオリンのなまなましい音などは,よくいわれる例であるが,このような演奏会では聴くことができない迫力のある音の要望はオーディオマニアといわれる層に多い。一方,物理的音質はあまり問題にせず,演奏内容を重視する層もある。そして,一般のオーディオ愛好家はこれらの中間に存在するといえよう。また,聴取者が聴きたい音は,流行と同じようにプログラム制作者によって作られる一面もあり,プログラム内容とともに聴取者を魅了する音作りがプログラム制作企業の戦略の一つとなっている。機器メーカーにおいても,音質性能向上とともにグラフィックイコライザーなどの音色作り機能を付加する方向や,逆に調整機能をできるだけ省いて操作を簡易化する方向など,聴取者のニーズに合わせて多様化している。

オーディオの基本は音を聴いて楽しむことにあり,レコードを聴くための蓄音機と放送を聴くためのラジオ受信機が一体化した電気蓄音機が最初のオーディオシステムといえる。ここに,レコード制作,放送送出,レコード再生,放送受信を併せて一つのオーディオの分野が形成された。一方,ラジオ放送が開始された時代から,自分で部品を購入してラジオ受信機を自作して楽しむ趣味の分野があり,現在もスピーカーシステムから装置に至るまで〈自作オーディオ〉といわれる分野は一部で盛んである。

 1960年代後期になると,テープレコーダーが普及を始め,とくにカセットテープレコーダーの出現により,家庭において簡易に放送の収録やレコードのダビングができるようになり,オーディオの分野が一段と拡張した。そして,今までレコードや放送の既成のプログラムソースを聴くだけの受身のオーディオから,SL機関車の音とか,野鳥の声などいろいろの音を録音して楽しむ〈生録(なまろく)〉といわれる分野が生まれた。また,歌唱や楽器演奏は本来オーディオとは別の趣味の分野とされていたが,〈カラオケ〉といって伴奏音楽をオーディオ装置で再生し,歌を歌って楽しむことが流行し,新しいオーディオの一分野となった。1980年代になるとディジタル技術が進展をみせ,レコード分野では1982年にコンパクトディスク(CD)が商品化され,やがてLPレコードに取って代わる成長を果たした。民生録音分野では87年にディジタルオーディオテープ(DAT)が登場し,91年にはディジタルコンパクトカセット(DCC)が発表された。92年にはポータブル用途に使える小型の光磁気ディスク(MD,ミニディスク)が市販された。かくてオーディオシステムにおいてはLPプレーヤーはCDプレーヤーに代わり,コンパクトカセットとMDの録音再生機が併存するようになった。これらはパッケージメディアと呼ばれており,メディア間のダビングやプログラム編集も行われるようになった。これらのディジタル機器はトランスデューサーとアンプを除けば,オーディオのコンポーネントの主役となっている。

 一方,パソコンが普及するにつれて,MIDI音源やMIDI楽器,ディジタル録音した音素材を使ってパソコンによって作曲や演奏あるいはカラオケを楽しむDTM(ディスクトップミュージック)が一般家庭でも楽しまれるようになってきており,これをよい音で聴くためにオーディオシステムと結合した新しい分野もできてきている。今までのオーディオは部屋の中で音を楽しむ形態が主流であったが,アウトドアオーディオと呼ばれる戸外で楽しむ分野も盛んになっている。その一つはカーオーディオで,従来のカーラジオが高級化し,FM受信とテープ録音再生の機能を加えて,車内におけるオーディオシステムがカーライフの中に定着した。また,戸外のレジャーに持ち歩くポータブルオーディオといわれる分野も盛んになっている。その一つはジョギングとか電車の中や歩きながらヘッドホンをかけてオーディオを楽しむヘッドホンステレオ,ラジオ受信機とカセットテープ録音再生機を一体化して携帯型にしたステレオラジカセや,携帯できるように小型化したシステムコンポを持ち歩いてオーディオを楽しむ分野などがあげられる。

入力信号としては放送電波と各パッケージメディアの再生信号がおもなものである。放送電波は受信アンテナにより受信され,チューナーに入り,検波増幅されて規定レベルの電気信号出力として取り出される。CD,MD,DAT,コンパクトカセット等のパッケージメディア機器の信号は規定レベルで出力される。テープは録音された磁気信号が電気信号として取り出され,規定レベルまで増幅される。これらの信号はメーンアンプに入り増幅されてスピーカーを駆動し音として放射される。また,これらの各機器はヘッドホンを接続して聴取できるしくみになっている。

 録音のときは,プリアンプ出力のところで各機器出力が選択,切り替えられて録音入力として録音機へ入る。マイクを使う場合,マイク出力はマイク用プリアンプに入り,規定レベルまで増幅されて録音入力となる。カラオケにマイクでとった歌を重ねたり,多くのマイクを使う場合はミクシングアンプが使われる。ミクシングアンプでは,マイク出力はそれぞれのプリアンプで増幅され,これらのプリアンプ出力と各パッケージメディア機器の出力は,それぞれのフェーダーによってレベル調整が行われ,混合(ミクシング)されて規定レベルの出力となり,録音機に入る。

信号が伝送再生される方式から次のように分類される。

一つの伝送系の信号をイアホンにより片耳で聴く方式。スピーカーで聴く場合はモノフォニック(後述)というべきであるが,ステレオに対し両者を併せてモノ,または慣習的にモノーラルと呼んでいる。

一つの伝送系で送られた信号をスピーカーで再生して聴く方式。スピーカーで再生された音を空間に放射し,その音場の中に身をおいて聴くもっとも一般的な方式である。

独立した二つの伝送系の信号をイアホンの左右に,それぞれの入力として加えて両耳で聴く方式。バイノーラル収音の基本は,人の頭を模して作ったダミーヘッドの両耳のところにマイクを取りつけて収音する方法をとる。この方式によると,ダミーヘッドが置かれた位置での音場の自然な感じのステレオ効果が得られるが,イアホン装着のわずらわしさと音像が頭の中に定位する感じになる頭内定位の問題が短所としてあげられる。この方式の発展には頭内定位の間題の解消が鍵となっている。

いくつかの伝送系により送られた信号を,それぞれ独立したスピーカーで再生して聴く方式。2チャンネルの伝送系のものがもっとも一般的であり,ステレオといえば,通常は2チャンネルステレオフォニック方式を指す。3チャンネル以上の伝送系をもつものはマルチチャンネルステレオフォニック方式という。2チャンネルの場合,サウンドステージと呼ばれる音の広がりや定位が二つのスピーカーの間に限られるので,サウンドステージを広くとる目的でマルチチャンネルが用いられる。ワイドスクリーン用映画では3~6チャンネルの方式が多い。家庭用としては,全周囲にサウンドステージを作る目的で4チャンネル方式が開発された。この方式はクォドラフォニックと呼ばれており,四つの独立したチャンネルを用いるディスクリート方式と四つの信号を合成して2~3の信号とし,これを再生のときに四つの信号に分解するマトリックス方式がある。一時期には,これらの方式のレコードも発売されたが,普及は停滞している。

現在のオーディオは古いレコード再生やAM放送受信などにモノ方式が残っているが,ステレオ方式が主体となっている。モノ方式よりステレオ方式に進展すると,(1)音源の方向,位置感がでる(定位効果),(2)あたかも実際の音場にいる感じ(臨場感)が得られる,(3)各音源の音の分離がよくなり,広がり感が出るなどのステレオ効果が生ずる。

 ステレオ効果は聴取者の両耳間に達する音の強さの差,位相や時間の差,音色の差などによって起こると考えられている。ステレオ効果を発揮させるための収音の基本は,2本のマイクを設置し,いろいろの音源からこれらのマイクに入る音にレベル差や時間差がつくように,マイク間隔や相互角度,指向性などを適当にとることである。この方法によれば,自然なステレオ効果が収音できるが,実際のレコードや放送における収音においては,さらに多くのマイクを使用して音場を人工的に加工合成する方法がとられている。

オーディオでは音を聴いて鑑賞する空間,つまり一般にリスニングルームと呼ばれる部屋の問題が重要である。よいリスニングルームの条件として次のことがあげられる。

(1)部屋の遮音がよく,静かであること。外部からの騒音振動の侵入をできるだけ小さくするとともに,空調設備などの内部の設備騒音を低くすることが必要である。また,外部に対しオーディオの音を騒音としてまき散らさない配慮もたいせつである。

(2)適度な響きがあること。聴取に適した響きの長さを残響時間で表すと,室の容積に比例して20~200m3の容積に対し0.2~0.4秒程度,低音域から高音域まで同じ程度がよいとされている。とくに一般の部屋では低音域の残響が長くなりがちなので注意を要する。

(3)有害な響きが起こらないこと。有害な響きとしては,フラッターエコーflutter echoと定在波の問題があげられる。フラッターエコーは鳴竜とも呼ばれるが,並行して向かい合った壁と壁,天井と床などの間で起こり,音が濁る。また,室中では音が周囲の壁や天井,床に入射したり,反射したりして互いに干渉し,室の寸法に応じていくつかの室固有の周波数の音の山や谷を作る。これを定在波と呼ぶが,とくに一般家庭の小さい部屋では,低音域でいくつもの定在波が重なって,ブーミングboomingといわれる音がこもる現象が起こる。

 これらの条件を満足させ,有害な響きを防止させるためには,部屋の音響設計を十分に行わねばならないが,一般の部屋においても,吸音性のカーテンやじゅうたん,音を拡散させる効果がある壁掛けの額縁やいろいろな家具の置き方などをくふうすると音響改善の効果が得られる。とくにスピーカーシステムの設置位置として,その高さや背壁や側壁との距離などが音質に大きく影響する。聴取位置としては,各スピーカーシステムから等距離の位置で聴くことが原則であり,2チャンネルの場合,スピーカーを見込む角度を60度とする位置を最適聴取位置としている。聴取位置における音場は部屋の音響特性の影響を受けるので,聴取者の中には,スピーカーシステムから聴取位置までの音の伝送周波数特性をグラフィックイコライザーにより電気的に調整し,最適状態で聴取する方法も行われている。

1876年にベルA.G.Bellが電磁型マイクロホンを発明し,その後,電気音響技術の進歩に伴ってレコードと放送の分野を中心にオーディオの分野が生まれて発達した。とくに,モノからステレオに進展して再生音に新たに空間的情報と臨場感が加わり,高品質の音の追究であるオーディオの分野では,ステレオがオーディオの一つの原点となった。

 ステレオは81年にパリの電気博覧会でステレオ効果が発見されたのをきっかけとして,その研究が進められた。なかでも1933年にアメリカのベル電話研究所が,フィラデルフィアのホールで演奏された管弦楽団の演奏を,三つの有線電話回線でワシントンのホールに送り,大規模な実験を行ったことは有名である。しかし,実際のステレオの普及は第2次世界大戦以後になり,テープ録音機により2チャンネルの録音再生ができるようになってからである。日本では52年にNHKが中波2波を使って実験放送を開始し,映画の分野ではワイドスクリーンと磁気録音が導入されて,52年にシネラマ(7チャンネル),53年にシネマスコープ(4チャンネル),57年にトッドAO方式(6チャンネル)が公開され,マルチチャンネルステレオが一部の映画に定着した。レコードでは1931年にイギリスのEMI社(Electric and Musical Industries Ltd.)がVL方式と45-45方式を開発していたが,57年に45-45方式のステレオレコードが商品化され,60年代後半にはレコードは特殊なものを除くとすべてステレオとなった。FMステレオ放送は61年にアメリカで標準方式が決定し,日本では63年にこの方式を採択し,69年にNHKが本放送を許可され,同年に初の民間FM局が開局した。また,70年代に入ると,4チャンネルステレオが盛んになり,放送やレコードにおけるいろいろな方式が提案されたが,方式の一本化ができず,プログラム制作の面でも問題が多く残されている。オーディオ産業をみると,1960年代に入ってから急速な発展を続けてきたが,80年代に入るとやや需要の低迷のきざしがみえた。そこにCD,DAT,DCC,MDとあいついでディジタルパッケージメディアの開発商品化が進み,一方,機器の小型化がミニコンポーネントステレオやポータブルステレオ,カーオーディオのさらなる需要を生み,業界は活性化した。また,CDを超える音質をもつスーパーディジタルオーディオの追求も進み,この種の製品もみられるようになり,DVD(Degital Versatile Disc)の出現で,この規格も整った。いまやマルチメディアと呼ばれるディジタル情報化時代に入り,オーディオもビデオ,放送,パソコン等の産業と一体となった展開をみせている。

オーディオのコラム・用語解説

【オーディオ用語】

イメージ比 image response ratio
スーパーヘテロダイン受信機では受信波周波数fsに対し,中間周波数fiの2倍にあたる21.4MHz離れた上または下の周波数の電波が妨害することがある。イメージ比とはこの妨害の割合を示し,fs+2fiの信号を入力して,fs受信の実用感度入力時の雑音レベルと同じになる入力レベルと実用感度入力レベルとの比をdBで表す。
息づき noise breathing
リミッターやコンプレッサーの雑音レベルが制御動作によって変動し,息づきをしているように聞こえる現象で,低い信号レベルのときや断続的な音の場合に耳につくことがある。
エアチェック air check
放送電波を受信し,その内容をチェックすることを意味するが,一般には放送電波を受信して録音することに用いられるようになった。
AM抑圧比 AM suppression ratio
FM受信機の復調出力に含まれる振幅変調成分は雑音やひずみの原因となるので,これを抑える能力尺度を示す。AM抑圧比は,搬送波にAMとFMを同時に加えて,FMによる1kHz100%変調の出力に対するAMによる400Hz30%変調の出力の比をdBで表している。
SN比
規定の信号レベルと雑音レベルの比。dBで表す。雑音レベルの測定には,聴感補正回路(A特性)を通して実効値を測る方法が一般的であったが,聴感補正回路(CCIR特性)を通してピークレベルメーターで測る方法が採用されてきている。
NRシステム noise reduction system
機器システムの雑音を低減する装置で,カセットテープデッキに用いられて普及した。ドルビー,dbX,ADRESなどいろいろの方式が発表されているが互換性はない。
f0(エフゼロ)
最低共振周波数のことで,スピーカーのf0は振動板が低音域で振動する反作用で入力インピーダンスが大きくなり,その最大値を示す周波数をいう。f0はスピーカーの低音再生の下限を示す。
オーバーハング overhang
レコードプレーヤーのトラッキングエラーを少なくするために行っているもので,レコード針先をターンテーブルの中心シャフトの上にもっていったときに,シャフトの中心から針先までの十数mmの距離をいう。
オフセットアングル offset angle
レコードプレーヤーのトラッキングエラーを少なくするため,トーンアームにカートリッジをある角度をつけて取りつけてあり,この曲げた角度をいう。
音圧レベル sound pressure level
音が存在すると音を伝える媒質の圧力が変化する。この圧力変化の実効値を音圧という。音圧Pの音圧レベルは基準となる音圧P0を2×104μbar(マイクロバール)として,20log(P/P0)(dB)で表す。
規定レベル
機器が適正に動作するために規定されている入・出力レベルをいい,それぞれの機器について電子機械工業会などで規格が設けられている。
キャプチャ比 capture ratio
FM受信機が同一周波数の混信を受けたときに,強い電波が弱い電波を抑える能力尺度を表す。キャプチャ比は妨害波を約30dBだけ抑圧するのに必要な希望波電力の妨害波電力に対する比で示される。
クリックノイズ click noise
音が発生している時間が数mm秒間程度のパルス性の雑音をいう。カリッとかカチッというような音に聞こえる。
クロスオーバー周波数 cross-over frequency
可聴周波数帯域をいくつかに分割し,帯域ごとに専用の機器を使って全帯域をカバーするシステムにおいて,この分割点の周波数をいう。帯域の分割は一種のフィルターによって行われ,分割点で周波数特性が劣化しないように,通過帯域以外の減衰は最適なスロープ特性をもつようにしなければならない。
クロストーク crosstalk
信号を伝送するときに他の信号が漏れてくることをいう。信号の大きさと漏れてきた不必要な信号の大きさとの比をdBで表す。チャンネル間のクロストークをチャンネルセパレーションchannel separationとして表すこともある。
高調波ひずみ harmonic distortion
基本周波数に対し整数倍の周波数の波を高調波と称し,高調波ひずみとは正弦波を入力したときに出力に表れる高調波成分をいい,基本波に対する含有率として%,またはdBで表す。
コンプライアンス compliance
可動体の動きに対する柔らかさを示す。例えば,ハイコンプライアンスのスピーカーとはコーンの支持部分が非常に柔らかいスピーカーをいう。スティフネスの逆数となる。
コンプレッサー compressor
信号のレベル変化範囲を圧縮する回路,または機器をいう。信号のレベル変化を小さくできるので,自動音量調整に用いられたり,伝送系や記録系の入力に入れ,出力側にこれの逆特性をもつエクスパンダーを入れて,系の雑音低減を図るコンパンダーの一部としても使用される。
混変調ひずみ intermodulation distortion
周波数が異なる複数の正弦波を入力したとき,出力にこれらの周波数の和と差の関係をもつ多くの周波数成分が発生する。このひずみ成分を混変調ひずみといい,音質を損ねる有害な原因となる。
コンポーネントステレオ component stereo system
家庭用オーディオ装置は機能別にコンポーネント(略してコンポ)と呼ばれる単体部分に分けられる。コンポとしては,スピーカーシステム,メーンアンプ,プリアンプ,レコードプレーヤー,チューナー,テープデッキなどがあげられる。コンポーネントステレオとはそれぞれのコンポ単体機器を組み合わせて構成したステレオ装置をいう。また,製造会社や販売会社がまとめたコンポーネントステレオを,システムコンポ(略してシスコン)と呼んでいる。
サブソニックフィルター subsonic filter
耳に聞こえない20Hz以下の超低音の雑音をカットするフィルターで,スピーカーの保護などのために使われる。
残響時間 reverberation time
部屋の響きの長短を表す量であり,定常状態にある音の音圧レベルが,音をとめてから60dB減衰するのに要する時間をいう。残響時間は部屋の容積に比例し,表面積や内装材の吸音力に反比例する。一般に部屋の残響時間は500Hzにおける値で代表している。
実用感度 usable sensitivity
ある一定のSN比が得られるアンテナ入力で表す受信機の感度をいう。例えば3.0μV(S/N 50dB)のように表示する。IHF(Institute of High Fidelity Manufactured Inc.の略)による感度表示はひずみ率3%のときのアンテナ入力電力をdBf(デシベルフェムト)で表示する。この場合0dBf=10⁻15Wである。
周波数帯域 frequency band
伝送できる低域周波数から高域周波数までの周波数幅をいう。増幅器などでは中音域の周波数の出力より3dB低下する高域,低域の周波数の間の幅をとる。
周波数特性 frequency response
入力周波数に対する出力応答特性をいう。入力レベルを一定にして周波数を変化させたときの出力レベルをdBで表す。機器の性能のうち,周波数特性の平たんさは重要な特性の一つである。
針圧 stylus force
フォノカートリッジの針先がレコードの音溝に与える圧力のことで,軽すぎると針とびを起こして音がひずむし,重すぎると音溝を傷めたり,針先の磨耗を早めるので,適正な針圧にする必要がある。
スティフネス stiffness
弾性体の硬さや可動体の動きにくさを表す。コンプライアンスの逆数になる。
セットステレオ set stereo system
各コンポの機能部分をセットとして組み立てたステレオ装置をいう。一つのキャビネットに一体に納めたアンサンブルステレオ,レコードプレーヤーとチューナーとアンプを組み込んだ本体と二つのスピーカーシステムを離しておく3点一式のセパレートステレオなどがある。
選択度 selectivity
希望波の近くにある妨害波から希望波を分離選択できる受信能力をいう。1信号選択度は希望波に同調した受信機の同調をずらしたときの出力の程度で表し,2信号選択度は希望波に同調した受信機に隣接の妨害波が混入する程度で表す。
ダイナミックレンジ dynamic range
音源から発生する音や機器が取り扱うことができる信号音の音圧の最大値と最小値の比をdBで表したものをいう。機器における最大レベルはひずみ発生によって抑えられ,最小レベルは雑音レベルによって決まる。
ダビング dubbing
あらかじめ録音してある音の信号に他の音の信号を加えて合成して録音することをいう。単に録音ずみのテープ内容を別のテープに複製することをダビングと呼ぶことも多い。
ダンピングファクター damping factor
アンプのスピーカーに対する制動効果を表す量である。メーンアンプにスピーカーを接続する場合,スピーカーのインピーダンスとアンプの出力インピーダンスの比で表す。
聴感補正
騒音,雑音,ワウフラッターなどを測定するときに,聴感に合わせた測定値を得るために測定器の特性を補正することをいう。この補正を行う回路の周波数特性を聴感補正曲線と呼ぶ。騒音計にはA,B,C,Dの諸特性,雑音測定にはA,CCIRおよびDINの諸特性が使用されており,ワウフラッター測定用の聴感補正曲線も規定されている。
定位 localization
音を聴いて音源の方向や位置を感ずることをいう。ステレオの重要な効果として音源が分離して,その方向や位置がわかることを定位効果という。また,イアホンで音を聴く場合などに起こりやすい頭のなかに音像があるように感ずることを頭内定位という。
dbX方式 dbX system
代表的なNRシステムの一つである。全帯域について入力側で信号レベルを圧縮し,出力側で伸長して復元するコンパンダーであり,圧縮比を1:2にとり30dB以上の雑音低減効果がある。圧縮時,伸長時のレベル設定に多少の相違があっても,出力レベルの変化があるだけで劣化が生じない利点があるが,雑音レベルの高い機器に対しては,雑音の息づき現象が問題になることもある。
ドルビー方式 Dolby system
代表的なNRシステムの一つである。入力側で系の雑音が大きい帯域の周波数特性をもち上げておくことをエンファシスemphasis,出力側で逆特性の減衰を行うことをディエンファシスde-emphasisといい,雑音低減に用いられる。ドルビー方式はレベル変化に合わせてエンファシス特性を可変にした一種のコンパンダーである。A型は業務用で全帯域を4分割して帯域ごとに信号処理を行っており,B型はヒスノイズを対象に高域のみの処理を行っている簡易型で,カセットテープデッキに広く用いられており,C型はさらに雑音低減効果を向上させた改良型である。ドルビー方式は雑音の息づき現象が検知されにくい長所をもつが,圧縮時と伸長時の正しいレベル設定が必要である。
ハウリング howling
スピーカーから出た音が,マイクやレコードプレーヤーのピックアップなどに拾われて増幅されて発振する現象をいう。ハウリングを防ぐには,指向性マイクを使って音源に近づけたり,スピーカーに指向性をつけてマイクにスピーカーからの音が入りにくくしたり,部屋を吸音性にすると効果がある。レコードプレーヤーの場合は,スピーカーから離したり,プレーヤーの下に床からの振動を絶縁する防振器具をおく対策がとられている。
ハム雑音 hum noise
商用電源周波数成分,またはその高調波成分が出力からでてくる雑音。電磁誘導によるものと電源の整流回路の平滑能力不足によるものとがある。
パンポット pan-pot
panoramic potentiometerの略。音像をスピーカー間のステレオ音場の任意の方向に定位させたり,移動させたりするためのポテンショメーターをいう。音源のモノ信号を左右のチャンネルに振り分けて逆連動形のポテンショメーターに加え,左右のレベル差により定位をつけたり,つまみを動かすことにより音像移動を行うようになっている。
ピークプログラムメーター peak program meter
プログラム音のピークレベルを監視する指示計器をいう。立上りの時間は早く,5kHzのステップ状の信号を加えたとき,5~10m秒で最終指示値の-2dBに達し,復帰の時間は2~3秒と緩やかにしてある。プログラム音において,1kHz正弦波で較正されたVUメーターより8±5dB程度大きく指示する。
ヒスノイズ hiss noise
磁気テープの再生時に発生する高音域の雑音をいう。テープに塗布した磁性材料の粒子性やヘッドとの接触の不均一なことから生ずる。これを改善したテープをローノイズテープlow noise tapeという。
ビート beat
周波数がわずかに異なる二つの正弦波が重ね合わされたときに生ずる振幅の周期的変化で,うなりといって可聴帯域では二つの周波数の差の周波数の音として聞こえる。
VUメーター VU meter
プログラム音のレベルを監視するための指示計器であり,聴感上の音量に近い指示をするように平均2乗形に近い特性をもつ。ピークプログラムメーターに比し緩やかな立上りを示し,ステップ状の信号を加えたときに99%の指示値までに達する時間を約300m秒に規定している。最近は規格値より立上り時間の速い計器も使用されている。
フェーズ phase
位相のことであるが,オーディオ機器ではステレオチャンネルの極性を合わせるために,片方のチャンネルの信号の位相を反転させるキーやスイッチにこの名を付している。
変調雑音 modulation noise
信号に付随して発生する雑音で,テープ録音のときにテープ磁性層のむらやヘッドとテープの接触状態の変動などが原因で振幅変調性の雑音が生じ,テープ走行方向にテープが微振動するために周波数変調性の雑音が発生する。後者の雑音は微振動を吸収する金属ローラーでできたフィルターをヘッドの直前に入れると減少できる。
マルチパス multipath reflection
電波が山や大きな建物などの障害物により多重反射することをいう。受信機に入る多重反射波による妨害をマルチパス妨害といい,受信アンテナを妨害の少ない方向に設置する必要がある。
ミューティング muting
楽器演奏においては弱音器を楽器につけること,オーディオ機器においては音を消すことをいう。例えばFMミューティングはFM受信の弱い入力のときや局間雑音を除くために信号を断にすることをいう。
リミッター limiter
FM受信の復調段の前にあって振幅変調成分を抑圧する回路,または音響調整卓内や送信所へ送出する前段にあって,あるレベルを超えた信号に対しレベルを制限する回路をいう。
レシーバー receiver
本来は電流や電波を音や映像の信号へ変換する受信機器を意味するが,無線関係ではラジオ受信機やイアホンなどをレシーバーと呼ぶ。オーディオではチューナー,プリアンプ,メーンアンプを一体化した機器をレシーバーと呼ぶ。
ワウフラッター wow flutter
ターンテーブルの回転やテープの走行などにおける速さの変動による再生音のふらつきをいう。変動の周波数が約10Hz以下のものをワウ,以上のものをフラッターと区別している。ワウフラッターは3kHz,または3160Hzの正弦波信号を用い,聴感補正回路を通したワウフラッター計で測定し%で表す。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オーディオ」の意味・わかりやすい解説

オーディオ
おーでぃお
audio

本来は「可聴周波の」という意味の形容詞で、可聴周波数を意味する場合はaudio frequencyのように使われる。しかし狭義では、可聴周波数の音や電気信号を取り扱う概念、または技術を表す名詞として使われることが多い。たとえば、可聴周波数の音の録音・処理・伝送・再生などを対象とするオーディオ工学audio engineering、あるいは録音・再生そのほかの目的で使用されるオーディオ装置audio systemの意味に使われる。

 また、ほかの用語と組み合わせて、デジタルオーディオdigital audio(デジタル技術で可聴周波数の電気信号を処理する工学、あるいは装置)、カーオーディオcar audio(自動車の中で使用されるオーディオ装置)のように使われることもある。さらにオーディオビジュアルaudiovisual(AV)といえば、視聴覚、すなわち視覚と聴覚とを統合した概念、あるいは技術をさすものとなる。

[吉川昭吉郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オーディオ」の意味・わかりやすい解説

オーディオ

もともとは,可聴周波数 audio frequencyのことで,人間の耳に音として感じる周波数,16~2万 Hzの範囲をいう。そこからこの周波数帯域の音を記録・再生するための機器一般 (オーディオ装置) をさすようになった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

リフォーム用語集 「オーディオ」の解説

オーディオ

本来は「可聴周波数の」「低周波の」という意味の形容詞で、audio frequencyのように使わる。住宅等では、音響設備(機器)の事を指す事が多い。

出典 リフォーム ホームプロリフォーム用語集について 情報

とっさの日本語便利帳 「オーディオ」の解説

オーディオ

音のこと。オーディオ趣味とは、CDなどで音楽を聴く楽しみをいう。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

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