カーンの定理(読み)かーんのていり(英語表記)Kahn's theorem

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

不完全競争理論の重要な定理で、不完全競争のもとで産業均衡(完全均衡)が達成されるための条件を示すもの。その条件は、(1)個別企業の利潤最大の条件、つまり限界収入と限界費用とが等しいこと、(2)超過利潤はゼロであること、つまり価格と平均費用とが等しいこと、の二つである。

 多数の生産者がいる産業を考える。輸送費、商標、広告などにより生ずる、特定企業の生産物に対する買い手側の選好が存在するなら、個別企業の需要曲線ddは右下がりである(の(1))。個別企業の利潤最大化は、限界収入mrと限界費用mcとが等しくなる点Rに対応する、生産量Qと価格P0のもとで達成される。生産量Qのもとで、平均費用acはTQであり、総費用は四角形OUTQで示される。販売収入は四角形OP0SQである。したがって四角形UTSP0だけ超過利潤が発生する。超過利潤が存在すると、その産業に新企業が参入してくるであろう。その結果、既存企業の販売量は減少する。企業の需要曲線と限界収入曲線はしだいに左方にシフトしていく。企業の参入・退出がみられず、企業数が不変となるのは超過利潤がゼロとなる、の(1)の点Sと点Tとが一致するときである。つまり需要曲線と平均費用曲線との接点Eが、産業均衡の点である(の(2))。R・F・カーンは、完全競争と収穫逓増(ていぞう)(平均費用の逓減)との両立性を研究したイギリスのケンブリッジ学派の経済学者であり、彼の研究をさらに展開したのが、同じ学派のJ・ロビンソンによるこの不完全競争理論である。

[内島敏之]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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