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完全競争 かんぜんきょうそうperfect competition

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

完全競争
かんぜんきょうそう
perfect competition

自由競争といわれる一般的概念を厳密に定式化した理論的,分析的概念。あるについて需要者と供給者の数がきわめて多く,相互に十分な市場情報と商品知識を有し,売買される財は全く同質で商標,特許,広告,嗜好などによる商品差別化は存在しない市場状況を純粋競争という。そこでは需要者と供給者の双方にとって価格は与件とされ,それに適応的に行動する結果,市場価格は社会全体の意図した需要量と供給量とが等しくなるところで決定される。完全競争はさらに供給者の新規参入の自由,生産要素の移動の自由,予測の確実性などのよりきびしい完全条件を付加した市場状況をいい,この状況では需要者の予算制約付効用最大化によってより安い価格が選好されるため,「同一時点では同一財にただ1つの価格しか成立しない」という一物一価の法則が実現するとともに,供給者の最大利潤の追求によって超過利潤が発生するかぎり新たな供給者の新規参入を誘発するので,結局は市場価格=限界費用=平均費用といういわゆる生産費の法則 (費用法則) が成立する。現実にはこうした完全競争はほとんどみられず,理論上の理想状態もしくは抽象概念といえる。そこでより現実に適用可能な形で提唱されたのが有効競争の概念で,産業組織論において使用される。

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知恵蔵の解説

完全競争

新古典派経済学では、ある1つの極限状態として、市場に売り手・買い手が共に無数存在し、個々の売り手・買い手が生産量・購買量を変化させても、市場への影響が存在しないような競争状態を仮定する。これが完全競争である。完全競争下では、市場全体として需要と供給が一致するような価格が均衡価格となり、一物一価の法則が成立する。この均衡価格を所与として、売り手である企業は利潤を最大化するように生産量を決定し、買い手である消費者は効用を最大化するように購買量を決定する。完全競争下では、平均費用以上の超過利潤は消滅し、価格は限界費用並びに最低平均費用と一致する。これを生産費の法則と呼ぶ。さらにこの時、社会の他の構成員を現状より不利にすることなくして誰も現状よりも有利になることができない、というパレート最適性が成立する。しかし現実の市場では完全競争が成立しているわけではないため、その理論の含意を巡って様々な論争がある。

(依田高典 京都大学大学院経済学研究科教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

かんぜん‐きょうそう〔クワンゼンキヤウサウ〕【完全競争】

経済学の理論上の市場状況の一。ある財について、多数の供給者と需要者がおり、誰もが現在価格を左右する影響力をもたず、自由に競争が行われる状態。この結果、一物一価の法則が成立するという。

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世界大百科事典 第2版の解説

かんぜんきょうそう【完全競争 perfect competition】

経済学では,〈自由競争free competition〉という概念は,一般に制約や干渉なしにほぼ同じ力のものが互いに他を排して,しかしその努力を阻害することなく最大の成果をあげるために競い合うという意味に用いられるが,その内容はあまりに広範で理論分析を行ううえの理想型としては明確性を欠くきらいがある。完全競争というのは,市場機構が最も理想的に機能する場合を抽象化した経済分析上の市場の類型で,通常つぎのような条件によって特色づけられる。

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大辞林 第三版の解説

かんぜんきょうそう【完全競争】

近代経済学の基本モデルの一。単独では価格の決定に影響力をもちえないほど市場参加者が多く、さらに市場への参入が自由であり、また各人が取引条件について完全な知識をもつという仮想の状態。経済に望ましい結果をもたらすとされる。 → 不完全競争

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

完全競争
かんぜんきょうそう
perfect competition

市場に需要者と供給者とがきわめて多数存在していて、彼らが自らの需要量または供給量を変化させることによっては市場価格を動かすことができない場合の市場状況をいう。完全競争市場では、個々の需要者あるいは供給者は市場価格で自らの望むだけの量をいくらでも需要したり供給したりすることができる。このことは、個々の需要者・供給者の売買する量は市場全体の量と比較するときわめて少ないことを意味している。完全競争が成立するためには、さらに、売買される財は同質であって製品差別化(財本来の機能とは別の、デザイン、品質などで他の財と区別すること)が存在しない、需要者・供給者は自由に市場に参入あるいは市場から退出することができる、需要者も供給者も市場価格について完全な情報をもっている、などの条件が必要である。
 完全競争は、経済分析を進めるうえで必要な一つの仮定であって、現実にそのような市場が存在するわけではない。たとえば、通常使用される右下がりの需要曲線と右上がりの供給曲線の分析は、完全競争市場の前提のうえになされている。完全競争市場では企業の参入・退出が自由なので、企業の超過利潤は長期的には消滅してしまうこと、あるいは資源の最適配分、すなわちパレート最適が達成されること、などを示すことができる。
 なお、同質的な商品に近く、供給者・需要者が多数である農産物市場や外国為替(かわせ)市場は、近似的に完全競争市場とみなされる場合もある。[畑中康一]

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世界大百科事典内の完全競争の言及

【競争】より

…また独占の対極として,売手と買手ともに多数存在する市場形態を考えることができる。その一つに理論的分析のために抽象化される完全競争市場があり,そこではどれもが市場に大きな影響を与えることのない無数の企業が存在し,市場に関する知識の不完全性がなく,各企業も価格を所与として行動することになる。まだ制度的,人為的な要因にもとづく競争の制限がなく,長期的には企業の参入,退出の自由も満たされているとされる。…

【ミクロ経済学】より

…企業は,生産要素を購入して生産に使用し,生産物を販売する。企業が販売量を変更することにより価格を変化させることができる場合は不完全競争であり,企業にとって市場価格が変更不能の場合は完全競争である。生産要素の生産への投入量と生産物の産出量の間の技術的関係(生産関数)の許す範囲で,生産物の販売収入と生産要素購入費用の差である利潤を最大にするように,企業は生産物の供給と生産要素の需要を決定する。…

【有効競争】より

…経済学には,競争の概念を純化させた,完全競争という一つの理念型が存在する。そこでは,情報の完全性,財の分割可能性,参入および退出の完全な自由などという条件が,競争が完全であるための条件として必要とされる。…

※「完全競争」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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