キャプト-デイティブ効果(読み)キャプトデイティブコウカ

化学辞典 第2版 の解説

キャプト-デイティブ効果
キャプトデイティブコウカ
Capto-Dative effect

一つの炭素原子上に電子供与性(dative)置換基と電子受容性(capto)置換基の両方が結合することによる電子的な効果をいう.とくに,ラジカル中心に電子供与性基と電子受容性基が置換したラジカルがもつ特異な安定性を説明するために用いられる.プッシュ-プル(push-pull)安定化ともいう.ラジカルの不対電子のp軌道と,電子供与性基のHOMO(ホモ)および電子受容性基のLUMO(ルモ)との相互作用によって説明される.キャプト-デイティブ効果をもつラジカルをキャプト-デイティブラジカルといい,ラジカルの付加によってこのようなラジカルを与えるアルケンをキャプト-デイティブアルケンという.たとえば,2-(t-ブチルチオ)アクリロニトリルは典型的なキャプト-デイティブアルケンであり,アゾビスイソブチロニトリルから発生させたラジカルと容易に反応して二量体を与える.この反応でラジカル重合が進行しないのは,生成するラジカル中間体がキャプト-デイティブ効果によって安定であるためと説明される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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