アクリロニトリル(読み)あくりろにとりる(英語表記)acrylonitrile

翻訳|acrylonitrile

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクリロニトリル」の意味・わかりやすい解説

アクリロニトリル
あくりろにとりる
acrylonitrile

不飽和ニトリルの一つ。正式には2-プロペンニトリルというが、一般的にはアクリロニトリルといわれている。シアン化ビニル、シアノエチレン、アクリル酸ニトリルともいう。

 独特の甘いにおいのする液体。工業的には、モリブデン系触媒を用いてプロピレンCH2=CH-CH3アンモニアNH3、酸素(空気)を原料とするアンモ酸化によるソハイオ法で合成されている。アンモニア、酸素とさらに反応してアセトニトリルCH3CNを副生する。

  CH2=CH-CH3+NH3+3/2O2
   ―→CH2=CHCN+3H2O
 猛毒であり、空気中に20ppm以上含まれると危険である。加水分解されるとアクリル酸アミド、アクリル酸となる。反応性が高く、付加反応によりシアノエチル基-CH2CH2CNを導入するシアノエチル化剤となる。重合や共重合しやすく、重合体のポリアクリロニトリルは合成繊維として、ブタジエンとの共重合体は合成ゴム(NBR)として、ブタジエンスチレンとの共重合体はABS樹脂として用いられる。そのほか炭素繊維、塗料、有機合成原料となる。可燃性であるうえに、空気に3~17%混和すると爆発するので、換気のよい所で保存し、取扱いに注意する。

[谷利陸平]


アクリロニトリル(データノート)
あくりろにとりるでーたのーと

アクリロニトリル
  CH2=CHCN
 分子式  C3H3N
 分子量  53.06
 融点   -83.55℃
 沸点   77.6~77.7℃
 比重   0.8060(測定温度20℃)
 屈折率  (n)1.3911

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アクリロニトリル」の意味・わかりやすい解説

アクリロニトリル
acrylonitrile

シアン化ビニル,シアン化エチレン,プロペンニトリルともいう。化学式 CH2=CHCN 。主要な合成繊維の一種であるアクリル繊維の原料であるとともに,合成樹脂,合成ゴムの主要原料でもある。工業的には,シリカを担体とするモリブデン酸ビスマスを触媒としてプロピレンとアンモニアと,空気または酸素から合成される (ソハイオ法) 。従来は酸化エチレンまたはアセチレンと青酸から合成されていた。融点-83℃,沸点 77.3℃。特異臭をもつ無色の液体で,有機溶媒と自由に混和する。重合防止剤として炭酸アンモニウムを加える。ジエンとディールス=アルダー反応を行なって,環式化合物を生成する。毒性がきわめて強く,空気中に 20ppm 以上含まれると危険である。

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