サリドマイド事件(読み)サリドマイドじけん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サリドマイド事件」の意味・わかりやすい解説

サリドマイド事件
サリドマイドじけん

非バルビツル系鎮静・睡眠薬であるサリドマイドを服用することによって起った薬害事件。 1961年 11月,西ドイツ小児科医 W.レンツによって,サリドマイドを妊娠初期に服用すると,アザラシ肢症などの奇形児が生れる可能性のあることが指摘された。 58年から西ドイツではコンテルガン,日本ではイソミンなどの商品名で,同時に発売されたが,レンツの見解表明6日後には,コンテルガンの製造販売が停止され,ベルギーオランダイギリスでも続いて停止された。アメリカでは,食品医薬品局 FDAの F.ケルシー女史が製造許可申請を却下したことにより被害を免れた。日本では 62年9月になって禁止されたが,これによるとみられる奇形児は死亡児を含めて約 1200人。全国 62の家族が,国と製薬会社に損害賠償を要求する訴訟を起した。

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世界大百科事典(旧版)内のサリドマイド事件の言及

【サリドマイド】より

…催奇形性の機序については葉酸代謝を改変するとするもの,細胞構成成分の変化をきたすとするものなどがあるが,確定されていない。催奇形性物質【福田 英臣】
[サリドマイド事件]
 日本では1959年ころからサリドマイド児が多数誕生し,死亡児を含めて約1200人前後と推定され,西ドイツの5000~6000人についで世界第2の被害国になった。サリドマイド児の誕生は,妊娠中の母親がサリドマイド剤を服用したことに原因する。…

【薬害】より

…取締法規的な考え方は,現薬事法にも引き継がれていた。 ところが,1950年代末からのサリドマイド事件を契機として薬事行政の不備が明らかになり,新薬の製造承認手続などが厳格になった。けれども,この事件を契機として諸外国においては薬事関係法の改正など,薬事行政の抜本的見直しが行われたのに対して,日本では,行政指導によって対応措置がとられたにすぎなかった。…

※「サリドマイド事件」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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