サリドマイド(読み)さりどまいど(英語表記)thalidomide

翻訳|thalidomide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サリドマイド」の意味・わかりやすい解説

サリドマイド
さりどまいど
thalidomide

1957年に西ドイツで開発された非バルビツール系鎮静・睡眠薬。一時繁用されたが、本剤を服用した妊婦からあざらし肢症などの先天性障害児が生まれ、社会問題となり、世界中で製造、販売が禁止された。わが国では1958年(昭和33)発売、62年に出荷停止、販売停止の措置をとった。有名な薬害事件の一つである。

 アメリカでは当初医薬品として承認されなかったが、その後の薬効研究で癌(がん)細胞の栄養補給路である血管の形成抑制などが認められ、ほかに治療法のない末期の骨髄腫患者に投与したところ3分の1の患者に改善がみられたことから、1998年10月骨髄腫の治療薬として承認された。副作用の作用機序の研究から新たな薬効が発見された珍しい例である。日本では「日本骨髄腫患者の会」の要望で、条件つきで輸入申請が認められ、厳重管理の下(もと)で使用されていたが、2008年(平成20)10月安全管理の徹底などを条件に、多発性骨髄腫の治療薬としての製造販売が厚生労働省により認可されている。

[幸保文治]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サリドマイド」の意味・わかりやすい解説

サリドマイド
thalidomide

非バルビツル酸系睡眠薬。ドイツサルファ剤の研究中に発見され,1956年に初めて臨床に応用された。副作用が少く,持続性のある睡眠薬として使われていたが,サリドマイド事件が起って製造販売が禁止された。この事件以来,薬物催奇形性関心が高まり,新薬の製造販売許可が以前よりきびしくなった。 (→奇形 )

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