日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
デジタルボイスレコーダー
でじたるぼいすれこーだー
digital voice recorder
音声信号をデジタル化して圧縮し、半導体メモリー(ICメモリー)に録音する装置。日本ではICレコーダーとよぶことが多い。小型・携帯型の音声録音機には、マイクロカセットを使ったアナログテープ方式、デジタルマイクロカセット(ノン・トラッキングNon-Tracking方式を採用していることから、NTカセットともよばれる)を使ったデジタルテープ方式などがあったが、これらはいずれも回転ドラムなどの可動機構をもつ装置で、信頼性、寿命、騒音などの点で問題があった。半導体メモリーの性能向上と音声符号化技術の進展によって、可動機構をもたない固体装置で録音・再生を行うことが可能になり、1990年代初めにデジタルボイスレコーダーが実用化された。
初期のデジタルボイスレコーダーは、会議のメモ録音や、屋外でのインタビュー収録などを主目的とした。このため、録音用のマイクロホンを備えるほか、単体で再生できるよう再生回路と再生用スピーカーを備えるものが普通であった。高音質を求めるよりも、小型に収めることと電池の消耗を少なくすることが重要で、音声はステレオになっていないものが多い。その後、電子回路の省エネルギー化が進んだことと、音楽も聴きたいなどという需要の拡大があって、ステレオホニック音声の高音質のものも発売された。初めはレコーダー自体で録音・再生をする機能が主であったが、USB端子を備えて、パソコンに音声データを出力したり、パソコンから音声データを取り込んだりする機能を備えるものも現れ、音楽用のデジタルオーディオプレーヤーとの境界はあいまいになりつつある。
組み込まれたフラッシュメモリーのほかSDメモリーカードなど交換可能なメモリーが使えるものが多くなり、10時間を超える長時間録音ができるもの、ラジオ受信・録音ができるものなども現れている。形態もクリップで胸ポケットに装着するものや万年筆形のものなどさまざまで、技術の進歩と需要の多様化によって機能は進化を続けている。
[吉川昭吉郎]