精選版 日本国語大辞典 「騒音」の意味・読み・例文・類語
そう‐おん サウ‥【騒音】
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一般に人間にとって好ましくない音を騒音という。これはかなり主観的な定義であり、ある人にとっては好ましい音であっても他の人には騒音と感じられることもある。しかしながら、最近の都市人口の増加、交通機関の過密化、建設工事の増加などにより、大部分の人にとって騒音と感じられる音の発生が多く、大きな社会問題となっており、対策が必要とされている。
[比企能夫]
騒音の大きさは騒音計によって測定される。これはマイクロホンによって騒音を検出し、その音の大きさのレベルを指示計で示すものである。この際、人間の聴覚の感度は音の振動数によって異なるので、そのような特性をもった聴感補正回路を通し、人間の感覚に近い騒音の大きさが得られるようになっている。聴感補正回路の特性の規格は国際的に定められており、それで計られたものを騒音レベルといい、単位はデシベル(dB)である。
[比企能夫]
騒音を減らすには、騒音源自体からの発生を減らすことや、騒音源と人間との間に隔壁などを設け、伝播(でんぱ)の途中で遮断するなど、さまざまな努力がなされている。いずれにしても一般的な方法はなく、個々の騒音源別に研究されなければならない。また、同じ音源でも気象条件や昼夜の別で騒音の大きさは異なる。
[比企能夫]
騒音の人間生活に対する影響を明確にすることは非常に困難なことであるが、便宜上、生理的影響、日常生活への影響、社会的影響に大別して考えることができる。
生理的影響としてもっとも顕著なものは、聴力への影響である。高レベル騒音にさらされると一時的難聴になったり、ひどいときには永久難聴になる危険がある。長時間、騒音の激しい労働環境に働く人に対して、聴覚保護のための許容基準が定められている。また、いわゆる「騒音」ではないが、音楽などをヘッドホンやイヤホンで楽しむためであると思われる「聴力異常」の若者が増加しているという報告もある。聴覚のみならず、消化器、呼吸器、循環器、神経系などあらゆる生理機能に対しても、騒音は一時的あるいは永久的障害を与えるという調査結果もある。
日常生活では、音響情報の伝達が阻害されることへの心理的不快感、注意の集中を妨げられることによる作業能率の低下、休息や睡眠が妨げられることなどの影響がある。
社会的には、騒音の激しい幹線道路沿いや空港周辺では土地利用が限定され、地価が低下したり、また家畜などにも影響し、牛乳や鶏卵の生産が低下するなどの問題がある。今日では、たとえば、道路建設、鉄道建設など、いかに公共性の高いものであっても、騒音問題を避けて通ることはできず、事前にその影響を調査し、またその対策法などを検討することが義務づけられる場合が多くなっている(「環境アセスメント」の項参照)。
[古江嘉弘]
人間の耳は、およそ20ヘルツ(Hz)から2万ヘルツの周波数の音を聴くことができるといわれているが、その感度は音の大きさあるいは周波数によっても異なる。ある音の大きさを、これと同じ大きさに聴こえる1000ヘルツの音を基準にして表した曲線を等感(音)曲線とよぶ。これは多数の人による測定の平均であり、人間の平均的な耳の感度と考えてよい。低い周波数の音ほど聴こえにくく、2000~4000ヘルツの音がもっともよく聴こえ、さらに高い周波数の音はふたたび聴こえにくくなるようすが示されている(
)。一般に騒音には、種々の周波数の音が種々の大きさで同時に含まれており、聴こえ方も複雑であるが、その大きさを一つの数値で表すため考案されたのが「騒音レベル」という量である(単位=デシベル、dB)。0デシベルはやっと聴き取れる程度の大きさであり、またたとえば、昼間の繁華街での騒音レベルは80デシベル程度である。騒音レベルが130デシベルを超えると、大きな音というより、耳に痛みを感ずるようになる。
[古江嘉弘]
騒音はそれを聴く人の主観によって判断されるものであるが、社会生活において、まったく音を出さないというわけにはいかないため、どれくらいの大きさの騒音レベルなら許容できるかの目安が必要である。この許容騒音レベルは、当然、時・場所・状況により異なる。つまり、睡眠時の許容騒音レベルは低くなければならないし、食事中なら多少高くてもかまわないであろう。このような観点から、種々の室内での騒音の許容レベルの例が
に示されている。なお、聴きたい音、注目している音以外のすべての音のことを「暗騒音」という。たとえば、会話を楽しんでいるときに聴こえてくるテレビの音、逆にテレビを見ているときに聴こえる他人の話し声などである。許容騒音レベルは許される「暗騒音レベル」のことである。
情報伝達という観点からは、暗騒音レベルは小さいほどよいといえるが、あまり小さすぎると、場合によっては心理的に圧迫感を覚えたり、落ち着けなかったりする。そのため、適当な大きさの音楽を用いて、逆に暗騒音レベルをあげることがある(バックグラウンド・ミュージック、BGM)。
[古江嘉弘]
従来の遮音計画では、主として外部あるいは隣室から侵入する標準的な騒音を仮定し、それを許容騒音レベル以下にすべく窓や壁などの材料あるいは構造をくふうするという方法がとられてきた。ところが、実際にその建物内で生活する個人の要求水準にはかなりの隔たりがある。たとえば音に非常に敏感な人とまったく無頓着(むとんちゃく)な人とでは、静けさの要求に40デシベルもの差がある。また音楽家やステレオマニアのように自室で出したい音の程度が80デシベル以上である人がいるのに対し、一方50デシベル以下しか音を出さないような生活をする人もいるなど多様である。そのため、とくにマンションなど集合住宅で思わぬトラブルが生じることがある。
このような住人の多様性を考慮して、事前に、たとえば「隣戸を意識しないで快適な生活ができる」あるいは「互いに気をつければ支障ない」程度の仕様であるというような「遮音等級」を明示できるような計画法が推奨されている。
[古江嘉弘]
『日本音響材料協会編『騒音振動対策ハンドブック』(1982・技報堂出版)』▽『日本建築学会編『建築の音環境設計』(1983・彰国社)』▽『日本騒音制御工学会編『建築設備の騒音対策』全3冊(1999・技報堂出版)』▽『一宮亮一著『わかりやすい静音化技術――騒音の基礎から対策まで』(1999・工業調査会)』▽『前川純一・森本政之・阪上公博著『建築・環境音響学』第2版(2000・共立出版)』▽『久野和宏編著、林顕效・三品善昭・大石弥幸・野呂雄一・龍田建次他著『騒音と日常生活――社会調査データの管理・解析・活用法』(2003・技報堂出版)』▽『前川純一・岡本圭弘著『騒音防止ガイドブック――誰にもわかる音環境の話』改訂2版(2003・共立出版)』▽『日本計量振興協会編『改訂・騒音と振動の計測』(2003・コロナ社)』▽『日本音響学会編、橘秀樹・矢野博夫著『環境騒音・建築音響の測定』(2004・コロナ社)』
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(畑明郎 大阪市立大学大学院経営学研究科教授 / 2007年)
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…また20Hz以下の振動数の音を超低周波音infrasoundと呼んでいる。この超低周波音はやはり人間の耳には聞こえない音であるが,ふつうの騒音と違った形で環境問題の一つになっている。このように空気中だけでも,人間の耳に聞こえるのは非常に限られた範囲の音であるが(ただし,ここで述べているのは定常音についてであって,非定常音では5万Hz程度まで知覚できるといわれる),さらに液体や固体の中を伝わる弾性波には多くの種類がある。…
… 軌道は,運転頻度の高い列車を対象に,建設費の節減と保守作業の軽減を図るために,軌道構造の強化,簡素化が行われており,道床をコンクリートでつくったり,あるいはレールを道床に直接締結する方式などを採用している場合が多い。また後述するが,電車通過時の騒音,振動対策もとられている。日本の地下鉄の軌間は,狭軌(1067mm)と標準軌(1435mm)がほとんどであるが,東京都営新宿線の1372mmや札幌のゴムタイヤ軌道(南北線,ゴムタイヤ中心間隔2300mm)もある。…
※「騒音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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少子化とは、出生率の低下に伴って、将来の人口が長期的に減少する現象をさす。日本の出生率は、第二次世界大戦後、継続的に低下し、すでに先進国のうちでも低い水準となっている。出生率の低下は、直接には人々の意...
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