…ドイツ文学史上,ゲーテが文学活動を開始した時期はシュトゥルム・ウント・ドラング(疾風怒濤(しつぷうどとう))と呼ばれるが,《オシアン》やシェークスピアを称揚したヘルダーがその理論的指導者であったのに対し,ゲーテは抒情詩の面で〈5月の歌〉をはじめとする《ゼーゼンハイム小曲》(1770‐71),戯曲の面で《ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン》(1773),小説の面で《若きウェルターの悩み》(1774)によって真に文学革命的な新生面を開いた。ゲーテの文学世界の特徴は,〈自然〉〈象徴〉〈理念〉〈活動〉〈愛〉〈魔神的なもの(デモーニッシュなもの)〉などという言葉によって要約される。彼にとって自然は青年時代から〈神性の生きた衣〉(《ファウスト》第1部)であり,森羅万象ことごとく神性の内的生命を象徴的に暗示するものであった。…
…現代人であれば無意識領域に働くと規定するようないっさいの諸力がダイモンであった。 このように元来は必ずしも邪悪さとは結びつかない存在者で,天才的人格の特性として用いられるドイツ語デモーニッシュdämonischなどに積極的側面が残っているものの,キリスト教の台頭とともに異教の神々は排され,ダイモン=デーモンも魔神や悪魔と同一視されるようになった。ゾロアスター教,ユダヤ教,イスラム教などと並んで善悪二元論の立場をとるキリスト教神学では,神や天使の構成する善の位階に対応して,悪の位階を構想するが,デーモンはもっぱら後者の中に組織されたのである。…
※「デモーニッシュ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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