改訂新版 世界大百科事典 「ハーゲンベック動物園」の意味・わかりやすい解説
ハーゲンベック動物園 (ハーゲンベックどうぶつえん)
Carl Hagenbecks Tierpark
ドイツのハンブルク市郊外シュテリンゲンにある有名な動物園で,1907年に設立された。創設者は動物商で同時に世界最大規模のサーカスの所有者ハーゲンベックCarl Hagenbeck(1844-1913)である。父が動物商であったために22歳で後を継ぎ,アフリカの原産地からヨーロッパ各地の動物園へ動物を送り込み,またみずからも集めた動物によるサーカス興行を成功させた。この動物園の特徴は,観客との間にあったおりや柵の障害物を取りのぞき,脱出できない堀をめぐらす無柵放養式を世界に先がけて実施したことであり,また,同じ大陸にすむ動物を一定の地域に集め,全体を一つの風景にまとめたパノラマ形式は有名で,すぐれた動物展示法としてその後開設された世界の動物園に大きな影響を与えた。戦争による破壊も修復され,現在もりっぱにその地位を保っているが,商業活動も続けているためにユニークな存在とされている。広さ約27ha。なお日本の動物園史にもとくに初期に多大の影響をもたらした。
執筆者:矢島 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報