出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 日本語でも,テアトロン,つまり見物席とともに舞台芸術を指すことばは〈芝居〉である。平安末期から中世にかけて流行した延年舞曲で,見物=観客が寺社の境内の芝生に居て見物したことに基づくが,現代語でも〈芝居〉は舞台上演も戯曲の内容も俳優の演技も指すことができるうえに,比喩的に演戯的虚構をも表しうる。〈遊び〉や〈偽りの外見〉について〈あれは芝居だ〉というし,この点では〈狂言自殺〉などというときの〈狂言〉に通じる。…
…演劇の成立に不可欠の要素である観客は,舞台上の劇を客席から鑑賞するだけの見物人ではなく,劇を進行させる演者とともに,その場で成り立つ演劇世界の創造に加わっているという考え方を指す。本来演劇は,宗教的共同体などで構成員全体が体験を共有するために行う祭礼劇を起源とし,そこから演じる立場と見る立場が分かれて成立した。…
…古来,演劇上演には観客がつきものであり,観客との対話がつねに舞台を活性化している。しかし,ルネサンス以降,ことに17~18世紀から,俳優が職業化し,舞台が商品化して,観客が入場料を払うようになってから,あらためて観客の問題は意識的に俎上(そじよう)にのせられるようになった。…
…しかし,それらの混沌とした形態のなかにも現代の舞台美術独自の傾向や表現を認めることができる。それは,プロセニアム・アーチ(舞台の額縁)を通して絵を見るような舞台を放棄して,舞台と観客とが直接的に結びついていた,かつての劇場形態に戻ろうとする動きである。古代ギリシア劇場やイギリスのエリザベス朝の劇場,日本の能舞台などには,いわゆるプロセニアム・アーチはなく,緞帳(どんちよう)幕も存在しなかった。…
※「観客」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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