バスク独立運動(読み)バスクどくりつうんどう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バスク独立運動」の意味・わかりやすい解説

バスク独立運動
バスクどくりつうんどう

スペインピレネー山脈地方,いわゆるバスク地方の独立運動。バスク人(→バスク族)は人種,言語ともスペイン人と異なり,ベルベル人の影響を受けず,19世紀まで自治権を認められていた。このため,ピレネー山脈のフランス側に住むバスク系住民とともに独立国をつくろうとする運動が起こり,1959年にはバスク祖国と自由 ETAという過激派組織も結成されて,誘拐テロ行為などでフランコ政権の弾圧に対抗,1973年にはカレロ・ブランコ首相を暗殺した。フランコ総統死後の民主化のなかでスペイン政府は 1979年バスク地方に自治権を与えたが,完全独立を要求する ETAは各地でテロを続けており,1990年代末からは停戦とテロ再開を繰り返している。

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知恵蔵 「バスク独立運動」の解説

バスク独立運動(西)

固有の言語と文化を持ち、重工業、金融の発達するスペイン北部のバスク地方では、スペインからの独立の願望が強い。この地方は1979年の自治憲章によって独自の徴税権や州警察などをもつ自治州となった。59年に結成され、完全分離を求めるテロ組織・バスク祖国と自由(ETA)の活動はよく知られている。2006年3月、完全分離を求めるETAは無期停戦を宣言、平和への期待がもたれている。05年1月、バスク自治州は事実上の独立を意味する自治強化案をスペイン政府に提出したが議会はこれを拒否、5月、ETAが停戦を受け入れた場合は和平に向けた対話を再開する方針を明らかにしていた。今回の停戦の背景には、サパテロ政権がETAと積極的に交渉したこと、スペインとフランス両警察の協力と一連のETAの大物逮捕が組織を弱体化させたことなどがある。しかし、98年には停戦宣言の後、和平交渉が決裂してテロが再開された経緯がある。

(渡邊啓貴 駐仏日本大使館公使 / 2007年)

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