世界大百科事典 第2版の解説 ヒカヤット・アミル・ハムザ【Hikayat Amir Hamzah】 マレー古典文学における英雄伝説の一つ。東南アジアへのイスラムの伝来とともにもたらされたペルシアの英雄伝説を,ペルシア語版からマレー語に翻訳したものである。主人公は預言者ムハンマドのおじハムザ・ブン・アブド・アルムッタリブで,最も人気のある英雄である。その死後さまざまな伝説的冒険談が付加されるが,ペルシア語版ではイスラム以前のペルシアの放浪の英雄として描かれ,ペルシアで人気の高い英雄伝説になった。年代記《スジャラ・ムラユ》の中に,1511年ポルトガルによるマラッカ攻撃の前夜スルタン・アフマドが戦士たちを鼓舞するため《ヒカヤット・アミル・ハムザ》を与える話が出てくるから,当時マラッカで愛読されていたのであろう。 出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報