イスラム(読み)いすらむ(英語表記)Islam

精選版 日本国語大辞典 「イスラム」の意味・読み・例文・類語

イスラム

〘名〙 (Islām 神に服従することの意)⸨イスラーム
イスラム教国教とする国々、あるいはイスラム文化圏をいう。

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デジタル大辞泉 「イスラム」の意味・読み・例文・類語

イスラム(〈アラビア〉Islām)

《絶対的服従・帰依の意。「イスラーム」とも》
イスラム教のこと。
イスラム教に基づく社会や文化。「イスラム世界」

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百科事典マイペディア 「イスラム」の意味・わかりやすい解説

イスラム

ムハンマドマホメット)によって創唱された宗教。正しくは〈イスラーム〉だが,〈イスラム教〉と慣用され,〈マホメット教〉〈回回(フイフイ)教〉〈回教〉などと呼ばれたことがある。現在,北アフリカ西アジア,インド,東南アジアを中心に分布する世界宗教で,信者ムスリム)は推定で6億人。アッラーを絶対唯一の神とする一神教で,コーラン聖典とする。教義は,アッラー,天使,啓典(コーラン),預言者ムハンマド,来世,予定の六信を中心とし,信者の生活はムハンマドへの信仰告白,1日5回のメッカ礼拝,ラマダーン月の断食喜捨,メッカへの巡礼,コーランによる法律の遵守などが義務づけられている。成立は610年で,622年ムハンマドがメッカ市民の迫害をのがれて,親友アブー・バクルらとメディナに遷(うつ)った時(聖遷(せいせん)=ヒジュラ)を,ヒジュラ暦の紀元元年としている。ムハンマドの死後,アブー・バクルが後継者(カリフ)となったが,その時期以後シリア,エジプトなどへ普及した。宗派はスンナ派(正統派)とシーア派(ムハンマドの女婿を正統とする)に大別され,ほかにハワーリジュ派,ワッハーブ派などの分派がある。
→関連項目アラビア半島アラブイスラム復興運動イスラム文化ウラマーウンマカーバ啓典の民サラフィーヤジハードシャリーアヒジャーズマフディーメッカ

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知恵蔵 「イスラム」の解説

イスラム

7世紀初頭、アラビア半島でムハンマド(マホメット)が唯一の神(アッラー)から啓示を受けて創始した宗教。信者は、西アジア、アフリカ、東南アジアなどに広く分布している。イスラムとは「唯一の神に絶対帰依すること」を指し、「教」を付けなくとも、それ自体が宗教を意味する。また、その信者はムスリム(絶対帰依する者)と呼ばれる。さらに「アッラー」はアラビア語で「神」の意味であり、神の名前を表す固有名詞ではない。マッカ(メッカ)の富裕な商家クライシュ族のハーシム家に生まれたムハンマドは610年、40歳の時に神の啓示を受ける。啓示はムハンマドの死(632年)に至るまで下り続け、後にこれをまとめたものが聖典『クルアーン』(コーラン)である。ムスリムの基本的な宗教実践は次の5つ(五行)。(1)「アッラーの他に神なし、ムハンマドは神の使徒なり」という根本的信仰を告白すること、(2)1日5回、マッカの方角に向かって礼拝すること、(3)イスラム暦の9月(日本では12月)の1カ月間、日の出から日没まで断食(サウム)をすること、(4)喜捨(社会のために役立てる税金のようなもの)をすること、(5)マッカへの巡礼。ムスリムの生活は、ムハンマドが迫害を逃れてマッカからマディーナ(メディナ)に移った622年を元年とする、イスラム暦(太陰暦、ヒジュラ暦)に従っている。また、イスラムでは、アブラハム、モーセ、イエスなどのユダヤ教・キリスト教の登場人物も預言者(神の言葉を伝える者)として認められている。しかし、ユダヤ教・キリスト教では神の意思が正確に伝わらなかったために、最終預言者としてムハンマドが選ばれたのだという。ユダヤ教・キリスト教・イスラムの神も実は同一であり、その意味では三者は異母兄弟の関係にあるといってもよい。ムハンマドの死後、後継者争いからシーア派とスンニ(スンナ)派に分裂し、両者からさらにいくつもの分派が発生した。現代のイスラム世界ではスンニ派が多数派である。

(岩井洋 関西国際大学教授 / 2007年)

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世界大百科事典 第2版 「イスラム」の意味・わかりやすい解説

イスラム【al‐Islām】


【イスラムとはなにか】
 イスラムはアラブの預言者ムハンマドが610年に創唱した一神教で,世界宗教として西アジア,アフリカ,インド亜大陸,東南アジアを中心に現在ほぼ6億の信者をもつ。正しくはアラビア語でイスラームといい,〈唯一の神アッラーに絶対的に服従すること〉を意味する。信者をムスリムというが,それは〈絶対的に服従する者〉の意である。イスラムそれ自体が宗教の名であるから,イスラム教と呼ぶ必要はない。

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世界大百科事典内のイスラムの言及

【アラブ文学】より

…アラビア語を用いて創造された文学をさすが,その担い手はアラブ人に限定されず,イスラムとアラビア語の拡大によってイランからイベリア半島まで多くの地域に広がり,その文化的伝統も継承された。アラビア文学とも呼ばれる。…

【インド】より

…西はトバカカール山脈,北はカラコルム,ヒマラヤ両山脈,東はアラカン山脈によって画され,南はインド洋に大きく逆三角形状に突出する一大半島部は,アジア大陸の一部ではあるが,亜大陸とよぶにふさわしい規模と相対的独立性とをもち,インド亜大陸とよばれる。そこは南アジアともよばれ,インド(バーラト),パキスタン・イスラム共和国,バングラデシュ人民共和国,ネパール王国,ブータンスリランカ民主社会主義共和国およびインド洋上のモルジブ共和国の7ヵ国からなる(現代の各国についてはそれぞれの項を参照)。その総面積は449万km2で,旧ソ連邦を除くヨーロッパ大陸の494万km2にほぼ匹敵する。…

【回教】より

…イスラムに対する中国の称呼。日本でも用いられた。…

【信仰】より

…それにもかかわらず信仰が信仰として独立するに至らなかったのは,ギリシアの宗教が多神教で,しかも政治と倫理を媒介することが少なかったためといえる。イスラムでは唯一の人格神による創造と審判が説かれ,神はムハンマドを通して人間にあわれみを伝え,啓示の書たるコーランをもって共同体の規範としたと説かれる。この場合,信仰は人格的対象をもち,かつ現実の生の困難にたえて神への要請にこたえる行為とされるのであるが,信仰があまりにも一点に集中しているため,〈信仰の自由〉や〈信仰と文化〉の問題が起こることはほとんどないのである。…

【中東】より

…近東あるいは中近東と中東とがおのおの指示する範囲において大きなずれが見られるのは,中近東には含まれたバルカンが中東には含まれないで,中近東には含まれなかったマグリブとアラビア半島(ヒジャーズを除く)とが中東に含まれることである。
[中東の構成要素]
 〈乾燥地域〉とか〈イスラム圏〉といった概括が,中東の風土や伝統の特徴を言いあてている面のあることは否定できないが,しかし面積において日本の40倍もの空間を占め,北海道からマレーシアまでの広がりに相当する南北の緯度差をもつ中東は,また世界の屋根パミール高原から標高-400mの死海の谷(ヨルダン地溝帯)にまで至る自然環境の多様性を呈しており,また社会や文化もイスラムという宗教によってだけ割り切れるような単純なものではない。確かにイスラムという宗教を生み出し,メッカとメディナ,すなわちハラマイン(二聖都)をもつ中東は,東南アジア,中国,中央アジア,インド亜大陸,アフリカ大陸,さらにバルカンの一部にまで広がるイスラム世界の中心ではあるが,そこには後述するように,ユダヤ教,キリスト教,さらにゾロアスター教など他の宗教に属する諸集団も存在している。…

【東南アジア】より

…【大林 太良】
【社会】
 東南アジアでは,たび重なる民族移動,複雑な地形条件から,言語,種族ともにモザイク状に分布している。インドと中国という大文明の中間地帯にあって,さまざまな土着の信仰体系の上に重層した仏教,イスラム,キリスト教が国教ないしはそれに準じた扱いを受け,ポルトガル,スペイン,イギリス,オランダ,フランスとそれぞれ宗主国の異なる旧植民地国の遺産も受け継いでいる。西欧資本主義との遭遇によって生じた社会経済的な亀裂は,二重経済,複合社会,コミュナリズムと名づけられて,現在に至るまでその社会を特色づけている。…

※「イスラム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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