日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビトキェビッチ」の意味・わかりやすい解説
ビトキェビッチ
びときぇびっち
Stanisław Ignacy Witkiewicz
(1885―1939)
ポーランドの劇作家、小説家。また、文芸理論家、哲学者、画家でもあった。ビトカツィのペンネームで知られる。父親の教育の下に幼時から詩や画に天才ぶりを発揮、クラクフの美術大学に学ぶ。有名な民族学者B・マリノフスキーとオーストラリア調査にも赴く。ロシア革命をペテルブルグで体験、1918年帰国してザコパネに住んだ。ポーランド前衛派の先駆者で、芸術における純粋形式フォルマリズムを唱え、ベケット、イヨネスコに先駆けて不条理劇を完成した。『狂人と尼僧』『母』など20数編に上る戯曲、長編小説『秋に別れ』(1927)、『満たされざるもの』(1930)がある。芸術的絶頂にあって自殺。
[吉上昭三]