フィニアン主義(読み)ふぃにあんしゅぎ(その他表記)Fenianism

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィニアン主義」の意味・わかりやすい解説

フィニアン主義
ふぃにあんしゅぎ
Fenianism

アイルランドのイギリスからの完全独立を武力で達成しようとする主義。1858年にニューヨークで結成された急進的なアイルランド人の政治組織が古代アイルランドの伝説的な軍団「フィアンナ」Fiannaを名のったが、ほぼ同時にダブリンで結成されたアイルランド共和主義同盟Irish Republican Brotherhood(IRB)の人々を含めて、このころから第一次世界大戦にかけてのアイルランドの急進的なナショナリストは「フィニアン」とよばれた。彼らの目標は独立共和国の実現で、武装蜂起(ほうき)を唯一の手段とし、「イギリスの危機はアイルランドの好機」と、絶えずその機会をねらった。1867年に起こした蜂起は失敗したが、イギリスの弾圧策はかえって民衆の支持をフィニアンに向け、彼らもまた自治運動やイギリス不在地主制を解体させた土地戦争と連携して持続的に活動を続けた。1913年のアイルランド義勇軍の結成、16年のイースター蜂起、19~21年の独立戦争は、その背後にIRBがあって初めて可能だったともいえる。現在北アイルランドで武力闘争を続けているアイルランド共和軍Irish Republican Army(IRA)はこの伝統を継承している。

[堀越 智]

『堀越智著『アイルランド民族運動の歴史』(1979・三省堂)』

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