改訂新版 世界大百科事典 「フェリビアン」の意味・わかりやすい解説
フェリビアン
André Félibien
生没年:1619-95
フランスの美術史家,美術批評家。シャルトルで生まれ,小貴族の家庭で教育をうけた後,パリで当時の一流の文学的環境で成長する。ローマ駐在のフランス大使付秘書官として,1647-49年赴き,画家プッサンらに出会う。帰国後,66年,王の修史官historiographeとして王立建築物や王立コレクションの史的記述を行う。66-88年に書かれた《古今の最も優れた画家の作品と生涯についての談話集》(全10巻)は,フランス・アカデミーの基本理念をあらわすもので,以後200年間多大な影響力を与えた。彼の思想は理想主義美学で,プッサンの絵画論に基づく。絵画はまず〈高貴な人間の行為action〉を示すもので,なかでも〈歴史画〉が最高とされる。色彩の価値は評価されない。描かれた人物は,明確な〈感情表現expression〉をもたなければならない。この意味で,〈静物画〉などは絵画ジャンルの最下等に位置するものとされる。
執筆者:木村 三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報