フーナ(英語表記)Hūṇa

改訂新版 世界大百科事典 「フーナ」の意味・わかりやすい解説

フーナ
Hūṇa

インドに侵入したエフタル族の呼称(インド語名)。エフタル族は5世紀半ばに,中央アジアから南下してグプタ朝支配下のインドに迫った。初期の侵略はスカンダグプタSkandagupta(在位455ころ-470ころ)によって撃退されたが,その後も侵略を繰り返し,グプタ朝の衰退をもたらした。最盛期は5世紀末から6世紀前半に出たトーラマーナToramāṇa,ミヒラクラMihirakula父子の時代であり,その勢力はパンジャーブから中央インドにおよぶ広大なものとなった。しかし530年ごろミヒラクラは西部インドの勇将ヤショーダルマンYaśodarmanに敗れてカシミール方面に退き,フーナの栄光時代は終わった。コスマスの《キリスト教地誌学》(6世紀半ばに成立)のなかでインド王と記される白フン王のゴルラスを,ミヒラクラとみる説もある。また玄奘の《大唐西域記》やカルハナの《ラージャタランギニー》には,ミヒラクラは仏教の迫害者として記されている。ミヒラクラの敗退後も,フーナ族は西北インドや中央インドで地方勢力として残存し,やがて完全にインド化してラージプート族などに吸収された。後世のラージプート諸氏族のなかには,フーナあるいはフーナに伴ってインドに入った中央アジア系民族の後裔とみられるものも多い。
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