ベネディクトゥス(6世紀の聖人)(読み)べねでぃくとぅす(英語表記)Benedictus Nursiensis

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ベネディクトゥス(6世紀の聖人)
べねでぃくとぅす
Benedictus Nursiensis
(480ころ―547ころ)

西方キリスト教会修道制度の創設者。中部イタリアのヌルシアに名門の子として生まれ、ローマで哲学と法学を学んだが、中途で修道生活に入った。ローマ近郊のスビアコ付近の洞窟(どうくつ)に住み、古代東方に始まる苦行主義的傾向の強い禁欲生活を3年間続けたのち、その地の司祭のねたみを買い、529年少数の弟子とともにモンテ・カッシーノに移って修道院を設立、共住生活を根幹とする修道院制度の基礎を築いた。

 ベネディクトゥスは「西欧修道制の父」とよばれているが、その功績はかかって彼の起草した戒律にあるといってよい。自己の体験をも踏まえて独修者の自己満足的修行の誤りを批判し、共同の定住生活に基づき「祈りと労働」をモットーとする組織的修行形式を規定した修道戒律を制定した。この戒律がその後の西欧修道生活の規範となったのである。

 戒律の普及・発展に尽力した教皇グレゴリウス1世(在位590~604)は『対話』第二篇(へん)で自らベネディクトゥスの伝記を記録している。その内容は奇跡物語と教訓を主とするものではあるが、ベネディクトゥスに関するほとんど唯一の資料とされている。聖人。祝日は3月21日、7月11日。

[赤池憲昭 2017年12月12日]

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