日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボーモン夫人」の意味・わかりやすい解説
ボーモン夫人
ぼーもんふじん
Mme Beaumont, Jeanne-Marie Leprince de Beaumont
(1711―1780)
フランスの物語作家。童話『美女と野獣』の作者。ルーアンの中流家庭に生まれ、十分な教育を受けた。最初、ボーモンと結婚したが、夫の無能と放蕩(ほうとう)のため離婚、同郷のトマ・ピションと再婚、6人の子に恵まれ幸福な家庭生活を送った。1748年、夫婦はイギリスに渡って、家庭教師として児童教育に力を注ぎ、雑誌『新フランス誌』を発行し、これに自作を次々に発表した。晩年はサボア地方の村に引退し、近隣の子女の教育にあたるかたわら、多くの童話を書き、これらはのちに『子供の雑誌』Magasins des Enfants(1737)、『若い女性の雑誌』Magasins des Adolesentes(1760)に収められた。ペローの童話がデカルト的・合理的であるのに対し、ボーモン夫人のはアングロ・サクソン的、非合理的童話といわれ、それはたとえば、作中の王子をトラやオオカミや奇妙な合成怪獣などに変身させるところにも現れている。
[榊原晃三]
『ポール・アザール著、矢崎源九郎・横山正矢訳『本・子ども・大人』(1957・紀伊國屋書店)』