日本大百科全書(ニッポニカ) 「紀伊國屋書店」の意味・わかりやすい解説
紀伊國屋書店(株)
きのくにやしょてん
東京都新宿に本店をもち全国65、海外24の店舗をもつ大手の小売書店。1927年(昭和2)田辺茂一(たなべもいち)が創業。田辺は文学愛好家で、創業の翌年、舟橋聖一、阿部知二(ともじ)らと『文芸都市』を創刊、1933年には総合雑誌『行動』を発刊するなど、小売店経営のかたわら、文芸、文化運動のパトロンの役を務めた。1945年(昭和20)5月戦災により店舗を焼失したが、戦後いち早く仮建築で復興、何度かの改築ののち、1964年、現在の紀伊國屋ビルを新築して大型書店となり、ホールや画廊を設置し、新宿の一つの「顔」として文化人、学生のたまり場となった。1955年に株式会社紀伊國屋書店出版部を設立、E・ヒラリーの『ヒマラヤの男』を処女出版し、E・フロム『生きるということ』、判沢弘『土着の思想』など多くの単行本や双書を刊行している。資本金3600万円、従業員数4000人、売上高1130億円(2010)。
[海老原光義]
『紀伊國屋書店編・刊『株式会社紀伊國屋書店創業五十年記念誌』(1977)』