改訂新版 世界大百科事典 「ボーモン」の意味・わかりやすい解説
ボーモン
Éon de Beaumont
生没年:1728-1810
フランスの外交官。フルネームはCharles Geneviève Louis Auguste André Timothéed'Éon de Beaumont。エオン・ド・ボーモンともいい,デオン騎士le chevalier(la chevalière)d'Éonと通称される。ディジョン近傍の古都トネールに零細貴族の子として生まれ,文才とフェンシングの特技によってルイ15世直属の〈王の機密局Secret du roi〉に抜擢され,女帝エリザベータ・ペトロブナのロシア帝室に女装をして潜入(1755),七年戦争におけるロシアとフランスの間を調停した。後に同じく〈女装の騎士〉としてジョージ3世治下のイギリスに全権委任大使として赴任(1762),ルイ15世没後は,8年の帰仏時を除いてはロンドンにとどまったが,女装のまま当代最高といわれた剣術家サン・ジョルジュ騎士le chevalier de Saint-Georgesと決闘するなどの逸話を残した。42歳から80歳までを女装で過ごした彼を,イギリスの性心理学者H.H.エリスはトランスベスティズム(服装倒錯)の典型とみなし,以来異装趣味はエオニズムeonismとも称される。
執筆者:種村 季弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報