マンガン電池(読み)マンガンデンチ

化学辞典 第2版 「マンガン電池」の解説

マンガン電池
マンガンデンチ
manganese battery

正極に酸化マンガン(Ⅳ),負極亜鉛,電解液に塩化アンモニウムあるいは塩化亜鉛水溶液を使用する一次電池マンガン乾電池とよばれることがある([別用語参照]乾電池).電解液にアルカリ水溶液を用いた高性能一次電池はアルカリマンガン電池とよぶ.マンガン電池の電解液には,塩化アンモニウムと塩化亜鉛との混合水溶液が用いられるが,塩化アンモニウムが主成分である塩化アンモニウム型(ルクランシェ型)と,塩化亜鉛主成分である塩化亜鉛型の2種類が存在する.最初に実用化されたのは,G. Leclanchéの考案した塩化アンモニウム型マンガン電池であるが,重負荷放電特性と耐漏液性にすぐれた塩化亜鉛型マンガン電池が開発された([別用語参照]ルクランシェ電池).塩化アンモニウム型マンガン電池では,下の電池反応式に示すように,放電すると負極で[Zn(NH3)2]Cl2が生成する.

 負極:Zn + 2NH2Cl → [Zn(NH3)2]Cl2 + 2H + 2e 

 正極:2MnO2 + 2H + 2e → 2Mn(O)OH

 全体:Zn + 2NH4Cl + 2MnO2

[Zn(NH3)2]Cl2 + 2Mn(O)OH 

一方,塩化亜鉛型マンガン電池では,放電時に負極でZnCl2・4Zn(OH)2が生成する.

 負極:4Zn + ZnCl2 + 8H2O →

ZnCl2・4Zn(OH)2 + 8H + 8e 

 正極:8MnO2 + 8H + 8e → 8Mn(O)OH

 全体:4Zn + ZnCl2 + 8H2O + 8MnO2

ZnCl2・4Zn(OH)2 + 8Mn(O)OH 

この反応式のように放電が進むとH2Oも消費されるので,塩化アンモニウム型に比べると漏液のおそれが小さい.日本では,この塩化亜鉛型マンガン電池に移行している.電解液のペースト化,正極に用いられるアセチレンブラック,電解酸化マンガン(Ⅳ)などの材料の製造技術,円筒型乾電池のペーパーラインド技術,亜鉛のアマルガム化技術などにより高性能化が行われている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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