日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルクランシェ電池」の意味・わかりやすい解説
ルクランシェ電池
るくらんしぇでんち
Leclanché cell
1866年フランスのルクランシェGeorges Leclanché(1839―82)によって発明された電池。負極活物質に亜鉛Znを、正極活物質に二酸化マンガンMnO2を、電解液に20%塩化アンモニウムNH4Cl水溶液を用いた次の構成の湿電池である。
Zn|NH4Cl|MnO2|C
ここで、正極には素焼きの円筒の中に二酸化マンガン粉末と炭素粉末との混合物を詰め、その中央に炭素棒を配したものを用いている。起電力は約1.5ボルトである。1868年には電解液に細かい砂または鋸(のこ)くずなどを加えて練り、ペースト状とするくふうが加えられ、さらに88年にはガスナーC. Gassnerが電解液にデンプンなどを加えてゲル化し、電解液が外へ流れ出ないように改良して乾電池化した。これが現在のマンガン乾電池の原形となっている。
わが国では、1885年に屋井先蔵(1863―1927)がこのルクランシェ電池と同じ構成の乾電池を作製し、1892年にアメリカで開かれた万国博覧会に出品している。
[浅野 満]
『橋本尚著『電池の科学――生物電池から太陽電池まで』(1987・講談社)』▽『電気化学会編『電気化学便覧』(2000・丸善)』▽『電池便覧編集委員会編『電池便覧』(2001・丸善)』▽『小久見善八・池田宏之助編著『はじめての二次電池技術』(2001・工業調査会)』