日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化マンガン」の意味・わかりやすい解説
酸化マンガン
さんかまんがん
manganese oxide
マンガンと酸素の化合物で、マンガンの酸化状態により次のものが普通に知られる。
(1)酸化マンガン(Ⅱ) 一酸化マンガンともいう。天然に緑マンガン鉱(りょくまんがんこう)として産出。高級酸化物を水素で還元すると得られる。灰緑色粉末または緑黄色結晶で、岩塩型構造。塩基性酸化物で、酸に溶けてピンク色のマンガン(Ⅱ)塩を生じる。
(2)酸化マンガン(Ⅳ)二マンガン(Ⅱ) 四酸化三マンガンともいう。ハウスマン鉱として産出。ほかのマンガン酸化物を空気中で約1000℃に熱して得られる。黒色金属光沢のある結晶。正方晶系、ひずんだスピネル型構造で、Mn2MnO4にあたる。化学式Mn3O4、式量228.8。塩酸と熱すると塩素を発して塩化マンガン(Ⅱ)となる。
(3)酸化マンガン(Ⅲ) 三酸化二マンガンともいう。ブラウン鉱として産出。酸化マンガン(Ⅳ)またはマンガン(Ⅱ)塩を空気中で600~800℃に熱すると得られる。黒色、立方晶系と正方晶系のものがある。
(4)八酸化三マンガン(Ⅳ)二マンガン(Ⅱ) 四酸化三マンガンを窒素‐酸素混合気体中で250~550℃に熱すると得られる。黒色晶。水に不溶。Mn2Mn3O8に相当する。
(5)酸化マンガン(Ⅳ) 二酸化マンガンともいう。各種の変態が知られており、天然にはα(アルファ)型が硬マンガン鉱として、β(ベータ)型がパイロルース鉱(軟マンガン鉱)として産出。硝酸マンガン(Ⅱ)を焼いてつくる。灰色から灰黒色の粉末。正方晶系でルチル型構造。水に溶けず、両性酸化物であるが、希酸やアルカリに作用しにくい。冷濃塩酸に溶けて暗緑色の溶液(MnCl62-)を生じるが、熱すると分解して塩化マンガン(Ⅱ)と塩素を発する。熱濃アルカリ溶液に溶けて3価(おそらくMn(OH)63-)と5価(MnO43-)を含む紫色溶液を生じる。γ(ガンマ)型が乾電池の減極剤に用いられる。ガラスの色消、触媒、マッチの原料、その他酸化剤としての用途が広い。
(6)酸化マンガン(Ⅶ) 七酸化二マンガンともいう。冷濃硫酸と過マンガン酸カリウムの反応によって得られる。化学式Mn2O7、式量221.9。暗緑褐色の油状液で、きわめて爆発しやすく危険。有機物と接触すると爆発する。水に溶けて過マンガン酸の紫色溶液を生ずる。融点5.9℃。比重2.4(20℃)。
Mn2O7+H2O―→2HMnO4
[守永健一・中原勝儼]
酸化マンガン(データノート1)
さんかまんがんでーたのーと
酸化マンガン(Ⅱ)
MnO
式量 70.9
融点 1650℃
沸点 ―
比重 5.43~5.46
結晶系 立方
屈折率 (nD) 2.16
酸化マンガン(データノート2)
さんかまんがんでーたのーと
酸化マンガン(Ⅲ)
Mn2O3
式量 157.9
融点 ―
沸点 ―
比重 4.81